アレキサンドライトの瞳
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ベリルはとてつもなく疲れていた。
疲れのあまり曇天の空を見上げ呆けていた。
ベリルの前には大人の男女と少年が紙を手にあーでもないこーでもないと言い合っている。
どうしてこうなったのだろうとベリルは溜息と共に零した。
朝は何時も通りに目覚め朝食を作っていたらジェームズが突然暖炉から現れて、お互い父親の母校への入学が決まったと聞き喜んでいればまたしても暖炉から二人の男女が現れた。
フリーモント・ポッターとその妻ユーフェミア・ポッター。
ファミリーネームの通りジェームズの両親で、突然現れた彼等は朝の挨拶と入学の祝いをそこそこにぐいぐいとベリルの腕を掴んだ。
何事か尋ねればさっそくダイアゴン横丁へと学用品を買いに行こうと言ったのだ。
断る暇も与えられず、その日は図書館に行こうと思い椅子にかけていたバッグを何とか掴むとユーフェミアにきつく抱きしめられ気付けば目の前には魔法使い、魔女が犇めくダイアゴン横丁に立っていた。
強引な姿現しでの移動にユーフェミアはベリルの腕を掴み上げ、何処も欠けた所はないかと恐ろしい問いをした。
特に痛みは無いと答えれば続けてフリーモントとジェームズが姿現しで現れる。
「よし、じゃあさっそく学用品を買い揃えようか!」
フリーモントの言葉にユーフェミアが頷き、ジェームズがベリルの肩を叩いて歩くのを促しポッター家+ベリルの唐突なお買い物が始まった。
グリンゴッツ魔法銀行でお金を下ろし、洋装店に書店、鍋屋に薬問屋と次々に周り残りは何が必要か前の三人は紙を片手に話していた。
書店で買った教科書や鍋等は同じく横丁内の鞄屋で買ったトランクにフリーモントが検知不可能拡大呪文をかけてくれたお陰で楽に運べているが朝から歩きっぱなしで根っからのインドア派であるベリルは疲労困憊であった。
帰りたいとまでは言わないがせめて一息休憩させてはくれないだろうかと三人の背中に念を送ればジェームズが振り返る。
一瞬、念が通じたかと期待したベリルであったが彼の興奮した顔に「あ、これは違うな」と長年の付き合いで察した。
「次は杖を見に行くぞ!」
気持ちが既に急いているジェームズはベリルの手を掴みオリバンダー杖店へと引っ張った。
紀元前382年創業と書かれた看板の下をくぐり抜け店内に入ると、木と埃、古い紙の匂いが鼻をつく。
入口のベルが鳴り止んで暫く店主のオリバンダーが店の奥から姿を現した。
現れて早々にオリバンダーはジェームズの両親の杖を、ベリルの父親が持っていた杖に付いて話すとその子供達の早い成長に喜びの言葉を述べてどちらの杖から探すのか尋ねて来た。
「先ずは僕から!」
早く自分の杖が欲しくて堪らないジェームズは挙手迄して一歩前に進み出た。
そんなジェームズをユーフェミアは諌めるがどうやって杖選びをするのか気になっていたベリルは気にせず順番を譲る。
オリバンダーはジェームズにいくつか質問をすると腕の長さを図り一本の杖を差し出した。
振ってみてと言われジェームズが杖を振れば側の花瓶が見事に破裂して床へと落ちる。
店内の物を壊したジェームズにベリルは彼の両親の顔色を伺えば仕方ないと言わんばかりの顔をしていた。
もう一度振ろうとするジェームズからオリバンダーは杖を奪うと別の杖を差し出す。
それを振るうと棚に置かれていた紙が風も無いのに店内を飛び交う。
その様を楽しそうに見ているジェームズからオリバンダーはまたも奪うとマホガニーで出来ているという杖を渡した。
すると埃っぽかった店内がジェームズを中心に空気が澄んで行く様に感じる。
ジェームズも自分の持つ杖を振ることもなくまじまじと見つめていた。
「28センチよくしなるマホガニーの杖です」
彼の様子から自分に合った杖は振らずとも分かるものらしい。
自分の杖が余程嬉しいのか杖から視線を外さないジェームズと入れ替わったベリルはオリバンダーの問いに答え腕の長さを図られると渡された杖を振った。
店内の物はあまり壊したくないなというベリルの思いは虚しく振るう杖は悉く店内を荒らした。
渡された杖が30本を越えた辺りでオリバンダーの顔に疲れが見えていた。
とうとう立ってベリルの様子を見ていてポッター家には椅子が差し出される始末。
難航する杖選びにフリーモントはこんな事がよくあるのかと尋ねるとオリバンダーは首を横に振りだいたいの子供は杖を2〜3本振った所で決まるのだと言う。
そんな大人の言葉を聞きながらベリルが渡された桜の杖を振るえば伝票だろうか何枚もの紙の束が何処からともなく飛び出し紙吹雪が視界いっぱいに舞った。
「杖が見つかるのが先か、ベリルがこの店を滅茶苦茶にするのが先か」
そう零したジェームズにベリルは店内が滅茶苦茶になるのが先だろうと目の前の光景に思った。
ジェームズとベリルが交代する際にオリバンダーが花瓶や飛んだ書類を元に戻したにも関わらず、既に店内が半分程滅茶苦茶になっている。
「いっそ君は石で出来た杖を使った方が良いんじゃないか」
ジェームズの言葉にそんな杖があるのならとベリルは同意した。
ベリルの祖父はマグルの世界で有名な宝石商人である。
そして父親はその祖父の扱う商品の美しさに惚れ込んで婿養子となった男だ。
祖父は宝石が、父親は加工されたジュエリーが大好きで晩酌にはお気に入りの宝石やジュエリーを眺めつつなんていう程に二人は宝石を愛している。
そんな二人の孫で娘であるベリルはというとやはりと言っていいのか宝石や鉱物を愛していた。
三度の飯より宝石、花より鉱物。
口を開けば宝石に鉱物の話。
そんなベリルと知って揶揄うジェームズの言葉にオリバンダーは神妙な顔つきになった。
「フルオライトさんは石がお好きで?」
「大好きです」
間髪入れず答えたベリルにジェームズは後方で腹を抱えて笑っていた。
しかしオリバンダーは笑いもせず荒れた店内の最奥へと姿を消す。
暫くして一体何処まで行っていたのか頭や肩に蜘蛛の巣を付けたオリバンダーは一本の杖を差し出した。
「本体に珪化木、芯はカーバンクルの心臓の琴線を使っています」
珪化木は木の化石の一種で、カーバンクルは脳に宝石を秘めた竜である。
内外共に石に関連した杖は先程の杖達より少し重く石独特の冷ややかな温度を感じた。
しかしそう感じたのも一瞬で杖を掴んだ手を中心にぽかぽかと体が暖かくなってくる。
自分に合った杖はこの杖だとベリルは思った。
オリバンダーもそんなベリルを察して微笑んでいる。
「この杖は酔っぱらった勢いで作った物でして」
「勢いで」
「材質も他の杖と違う為か癖が強くなかなか買い手が見つからず私も存在をつい先程迄忘れておりました」
しかしオリバンダーはジェームズの言葉でこの杖の存在を思い出したらしい。
「癖の強い杖ではありますが使いこなせればきっとフルオライト様の力になるでしょう」
オリバンダーの言葉にベリルは珪化木のつるりとした表面を撫でて胸に抱く。
これからよろしくと杖に向かって言えば胸に抱いたほんのり熱を帯びて応えてくれたようなそんな気がした。
疲れのあまり曇天の空を見上げ呆けていた。
ベリルの前には大人の男女と少年が紙を手にあーでもないこーでもないと言い合っている。
どうしてこうなったのだろうとベリルは溜息と共に零した。
朝は何時も通りに目覚め朝食を作っていたらジェームズが突然暖炉から現れて、お互い父親の母校への入学が決まったと聞き喜んでいればまたしても暖炉から二人の男女が現れた。
フリーモント・ポッターとその妻ユーフェミア・ポッター。
ファミリーネームの通りジェームズの両親で、突然現れた彼等は朝の挨拶と入学の祝いをそこそこにぐいぐいとベリルの腕を掴んだ。
何事か尋ねればさっそくダイアゴン横丁へと学用品を買いに行こうと言ったのだ。
断る暇も与えられず、その日は図書館に行こうと思い椅子にかけていたバッグを何とか掴むとユーフェミアにきつく抱きしめられ気付けば目の前には魔法使い、魔女が犇めくダイアゴン横丁に立っていた。
強引な姿現しでの移動にユーフェミアはベリルの腕を掴み上げ、何処も欠けた所はないかと恐ろしい問いをした。
特に痛みは無いと答えれば続けてフリーモントとジェームズが姿現しで現れる。
「よし、じゃあさっそく学用品を買い揃えようか!」
フリーモントの言葉にユーフェミアが頷き、ジェームズがベリルの肩を叩いて歩くのを促しポッター家+ベリルの唐突なお買い物が始まった。
グリンゴッツ魔法銀行でお金を下ろし、洋装店に書店、鍋屋に薬問屋と次々に周り残りは何が必要か前の三人は紙を片手に話していた。
書店で買った教科書や鍋等は同じく横丁内の鞄屋で買ったトランクにフリーモントが検知不可能拡大呪文をかけてくれたお陰で楽に運べているが朝から歩きっぱなしで根っからのインドア派であるベリルは疲労困憊であった。
帰りたいとまでは言わないがせめて一息休憩させてはくれないだろうかと三人の背中に念を送ればジェームズが振り返る。
一瞬、念が通じたかと期待したベリルであったが彼の興奮した顔に「あ、これは違うな」と長年の付き合いで察した。
「次は杖を見に行くぞ!」
気持ちが既に急いているジェームズはベリルの手を掴みオリバンダー杖店へと引っ張った。
紀元前382年創業と書かれた看板の下をくぐり抜け店内に入ると、木と埃、古い紙の匂いが鼻をつく。
入口のベルが鳴り止んで暫く店主のオリバンダーが店の奥から姿を現した。
現れて早々にオリバンダーはジェームズの両親の杖を、ベリルの父親が持っていた杖に付いて話すとその子供達の早い成長に喜びの言葉を述べてどちらの杖から探すのか尋ねて来た。
「先ずは僕から!」
早く自分の杖が欲しくて堪らないジェームズは挙手迄して一歩前に進み出た。
そんなジェームズをユーフェミアは諌めるがどうやって杖選びをするのか気になっていたベリルは気にせず順番を譲る。
オリバンダーはジェームズにいくつか質問をすると腕の長さを図り一本の杖を差し出した。
振ってみてと言われジェームズが杖を振れば側の花瓶が見事に破裂して床へと落ちる。
店内の物を壊したジェームズにベリルは彼の両親の顔色を伺えば仕方ないと言わんばかりの顔をしていた。
もう一度振ろうとするジェームズからオリバンダーは杖を奪うと別の杖を差し出す。
それを振るうと棚に置かれていた紙が風も無いのに店内を飛び交う。
その様を楽しそうに見ているジェームズからオリバンダーはまたも奪うとマホガニーで出来ているという杖を渡した。
すると埃っぽかった店内がジェームズを中心に空気が澄んで行く様に感じる。
ジェームズも自分の持つ杖を振ることもなくまじまじと見つめていた。
「28センチよくしなるマホガニーの杖です」
彼の様子から自分に合った杖は振らずとも分かるものらしい。
自分の杖が余程嬉しいのか杖から視線を外さないジェームズと入れ替わったベリルはオリバンダーの問いに答え腕の長さを図られると渡された杖を振った。
店内の物はあまり壊したくないなというベリルの思いは虚しく振るう杖は悉く店内を荒らした。
渡された杖が30本を越えた辺りでオリバンダーの顔に疲れが見えていた。
とうとう立ってベリルの様子を見ていてポッター家には椅子が差し出される始末。
難航する杖選びにフリーモントはこんな事がよくあるのかと尋ねるとオリバンダーは首を横に振りだいたいの子供は杖を2〜3本振った所で決まるのだと言う。
そんな大人の言葉を聞きながらベリルが渡された桜の杖を振るえば伝票だろうか何枚もの紙の束が何処からともなく飛び出し紙吹雪が視界いっぱいに舞った。
「杖が見つかるのが先か、ベリルがこの店を滅茶苦茶にするのが先か」
そう零したジェームズにベリルは店内が滅茶苦茶になるのが先だろうと目の前の光景に思った。
ジェームズとベリルが交代する際にオリバンダーが花瓶や飛んだ書類を元に戻したにも関わらず、既に店内が半分程滅茶苦茶になっている。
「いっそ君は石で出来た杖を使った方が良いんじゃないか」
ジェームズの言葉にそんな杖があるのならとベリルは同意した。
ベリルの祖父はマグルの世界で有名な宝石商人である。
そして父親はその祖父の扱う商品の美しさに惚れ込んで婿養子となった男だ。
祖父は宝石が、父親は加工されたジュエリーが大好きで晩酌にはお気に入りの宝石やジュエリーを眺めつつなんていう程に二人は宝石を愛している。
そんな二人の孫で娘であるベリルはというとやはりと言っていいのか宝石や鉱物を愛していた。
三度の飯より宝石、花より鉱物。
口を開けば宝石に鉱物の話。
そんなベリルと知って揶揄うジェームズの言葉にオリバンダーは神妙な顔つきになった。
「フルオライトさんは石がお好きで?」
「大好きです」
間髪入れず答えたベリルにジェームズは後方で腹を抱えて笑っていた。
しかしオリバンダーは笑いもせず荒れた店内の最奥へと姿を消す。
暫くして一体何処まで行っていたのか頭や肩に蜘蛛の巣を付けたオリバンダーは一本の杖を差し出した。
「本体に珪化木、芯はカーバンクルの心臓の琴線を使っています」
珪化木は木の化石の一種で、カーバンクルは脳に宝石を秘めた竜である。
内外共に石に関連した杖は先程の杖達より少し重く石独特の冷ややかな温度を感じた。
しかしそう感じたのも一瞬で杖を掴んだ手を中心にぽかぽかと体が暖かくなってくる。
自分に合った杖はこの杖だとベリルは思った。
オリバンダーもそんなベリルを察して微笑んでいる。
「この杖は酔っぱらった勢いで作った物でして」
「勢いで」
「材質も他の杖と違う為か癖が強くなかなか買い手が見つからず私も存在をつい先程迄忘れておりました」
しかしオリバンダーはジェームズの言葉でこの杖の存在を思い出したらしい。
「癖の強い杖ではありますが使いこなせればきっとフルオライト様の力になるでしょう」
オリバンダーの言葉にベリルは珪化木のつるりとした表面を撫でて胸に抱く。
これからよろしくと杖に向かって言えば胸に抱いたほんのり熱を帯びて応えてくれたようなそんな気がした。