第2話-馳せる-
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「知ってるか。この下の皿の本来の使い方」
「え…………?」
突然の質問に私は何も答えられなかった
「この皿はソーサーと言う。ソーサーに紅茶やコーヒーをティーカップから移して飲むのが本来の使い方だそうだ」
「そうなんですか!?」
「ああ……、そもそもソーサーが主流となった時代には、もっと丸くスープ皿のような形だったそうだが野蛮な飲み方だと、取っ手の着いたカップもあったことからこういう平たい皿になったんだ」
「へぇ!先生博識ですね!」
「……………どうでもいいとか思わねぇのか」
「えぇ………、そんなこと思わないですし、先生が話始めたんじゃないですか」
先生は堪えきれないといった様子で、笑いだした
「せ、先生………?」
「悪い、お前面白いな」
目尻を親指で拭き取った
涙が出るほど面白かったのか
リヴァイ先生って変な人なんだなと、そんなことを思ってしまった
「…………でも先生の話からすると、この………ソーサー………はもう用途を成してませんよね?不要なんじゃ」
先生はまた笑いだした
今度はお腹を抱えてだ
「な、何がそんなにツボなんですか………」
「いや、すまない………」
先生は、はぁとため息をつくと
「今は客にスプーンを付けたり、砂糖、ミルクをソーサーに置いて提供する為にあると聞いたことがある」
「ああ、なるほど………」
「見栄えも良いしな」
「そうですね」
ほんの少しだけ冷えた紅茶を私はまた1口飲んだ
「で、本題だが」
私は身を強ばらせた
「お前、授業ちゃんと聞いてんのか?」
やっぱりそのことだよなぁとティーカップをソーサーに置いた
「あー………まぁ、そう、ですね………」
「俺の顔ばっか見てなんかついてんのかと思っていた」
「い、いや!違くて………、別にそんなやましい気持ちというか、そういうのは全く………」
「なら数学が苦手なのか」
「そーゆーわけでもー…………ないーと言いますーか」
語尾を伸ばしに伸ばして、私は膝の上で手を握った
「授業でも言ったが、わからないままにするな。わからなければ聞きに来い」
「…………はい」
「朝でも放課後でも、俺が学校にいる間は時間を取る。お前が嫌じゃなければだが」
「嫌なんて、滅相もありません!」
「…………ふ、そうか」
今日の先生はよく笑う
先生
私はやっぱり、前世の記憶とか関係なく
「……先生が好きです」
今のは私が言ったのか
きょろきょろと辺りを見渡すが、私以外に生徒なんて居ない
「…………何を言ってる」
先生の顔が見れない
先生はきっと呆れた顔をしてるんだろう
私はなんて馬鹿なことを
「…………前世に、引っ張られてんだろう」
「え…………?」
「お前のそれが本心なら、それは前世に引っ張られていると言ったんだ」
「…………なんで、そんなこと言うんですか」
「事実だからだ」
「そんな……、そんなことないです………」
「いや、ある。お前は勘違いをしている。前世の気持ちを持ってくるな」
「なんで!」
私はそう声を荒らげ、立ち上がった
「やっと会えたのに…………、ずっと好きだった人に会えたのに、そんなこと、言わないでください」
そう言い放って準備室を飛び出した
私はつくづく泣き虫だと思う
ミカサの言う通りだ
子どもみたいに泣いて、先生を困らせる
きっと前世の私も先生を困らせていたんだろう
ああ、せっかく先生がいれてくれた紅茶残してきちゃったな
楽しいなと思ったのに
先生が笑ってくれて嬉しいって思ったのに
私は愚かで、情けない
自分が悪いのに好きな人のせいにするんだから
私はこの日、初めて前世の記憶があることを
嫌だと思ってしまった
"そんなのは私の妄想で、もしかしたら前世の恋人とリヴァイ先生を重ねているだけなのかもしれない。ただ似ていただけかもしれない"
そんなことを口にしたことに大いに後悔した
そんなとを考えた自分に酷く落胆した
私の心が叫ぶ気持ちを、私が無くそうとしていたのだから
第2話-馳せる-END.