第2話-馳せる-
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「……リヴァイ先生、いらっしゃいますか?」
コンコンコンと、数学準備室をノックする
しばらくしてから
「入れ」
という低い声が中から聞こえる
「し、失礼します」
一切音が立たないドアを開けると、エプロンにマスク、三角頭巾を被ったリヴァイ先生がいた
「……リヴァイ先生、その格好は………」
「止まれ」
強ばった体は自然と立ち止まった
リヴァイ先生は私に近づき上から下まで鋭い眼光で私を見ると
「………そこに座れ」
と指をさしたのは近くの椅子だった
数学準備室はいつくかの机と椅子が並び、その中でも3つの机の上にはパソコンが置いてある
壁際には本棚がいつくもあり、ズラっと並ぶ本を眺めた
「オイ、何してる。早く座れ」
「は、はい!」
リヴァイ先生に指定された椅子に座ると、リヴァイ先生はエプロン、マスク、3角頭巾を外し
私より少し離れた所に座った
「なんだ」
「え?」
「こんな朝早くから、用があったからきたんだろう。早く要件を話せ」
「あ、えっと………」
「まさか、俺に会いに来たとでも言うのか」
冗談なのか本気なのか、どちらで言っているのか分からない
でもあながち間違いではない質問に私は俯いてしまった
「オイ、待て。冗談だ。お前には冗談が通じねぇのか」
「す、すみません………」
「さっさと要件を話せ。俺は忙しい」
「あ、あの………、リヴァイ先生は……ぜ、前世の記憶がありますか?」
「あ?」
「あ、えっと………、その………」
「何言ってんだお前。…………ああ、お前がぶっ倒れて目が覚めた時に言ってた訳分からねぇことか。兵長とかなんとか言ってたな」
「…………はい。信じて貰えないかもしれませんが、私には少しだけ前世の記憶があります。同じクラスのエレン、ミカサ、アルミン…………」
「…………どうした、続けろ」
あの時、ファミレスで話をしていたとき
エレンはどうして、リヴァイ先生に前世の記憶がないと決めつけたんだろうか
エレンたちとリヴァイ先生は
私と出会う前よりずっと再会していた………?
仮にもし、そうだとしたら
どうして私より先にリヴァイ先生のことを話してくれなかったんだろう
エレン達は本当に前世の私の想い人を知らないのか………?
「オイ」
「あっ!す、すみません……」
「どうした、具合でも悪いのか」
「い、いえ………」
リヴァイ先生は立ち上がって私に近寄ると、おでこ同士をくっつけた
「せ、先生っ………」
「黙れ」
シンと静まり返る準備室で私の心臓の音だけが聞こえてしまっているんじゃないかと、不安になってしまう
「…………熱はないみたいだな」
リヴァイ先生は熱があるか確認してくれたようだ
そんなことをしなくても!手とかあるじゃん!と言いたかったがもちろんそんなことは言えない
「それで前世の記憶がある、とかっていう話だったな」
「…………はい」
「ない」
スパン、と言い切られ私は先生の顔を見ることが出来なかった
「そう、ですよね………」
「………その前世のお前も俺と会っていたのか」
ただただ驚いた
てっきり用が済んだのなら教室に戻れと言われると思っていたからだ
「…………はい」
「………そうか。俺はどんな奴だったんだ」
「え………?」
「気になるだろう、前世の俺を知ってるやつがいたら」
先生はまたさっきと同じ場所に座り、腕を組んだ
「あ………、えっと、私はそんなに詳しくは知らなくて………。エレン、ミカサ、アルミンが私より深く前世の記憶を持っているんです」
「じゃあお前は、俺のことは何も覚えてねぇのか」
「覚えてないこともない、んですけど……」
「じゃあ話せ」
先生は両肘を膝の近くに起き、前かがみになった
前髪の隙間から鋭い眼が光る
「…………お、怒りませんか?」
「場合による」
「じゃ、じゃあやめておきます……」
「冗談だ。話せ」
本当に先生の冗談は冗談だと聞こえない
「…………私の想い人でした。はっきりとは、それしか分からなくて……」
俯いたままそう言うと先生の反応はなく
ゆっくりと恐る恐る、先生の方を見ると
先生は目を丸くして、しかも頬を染めていた
「せ、先生………?」
私の呼び掛けに先生は小さく何か言ったあと、私の方を見た
その声は私には届かない声の大きさだった
「教室に戻れ」
「あ、はい………」
もう、終わってしまうのか
もっと話したいことが、聞きたいことがあったのに
「………そんな泣きそうな顔するな。またいつか会える」
「…………え?」
リヴァイ先生は優しい顔で微笑んで、そう言った
「先生………今、なんて……?」
「あ?俺は何も言ってない」
「え………?」
「いいから教室に戻れ」
「…………はい」
また私の勘違いなのか
先生が言ったと思った言葉は先生は言っていないと言う
先生は…………
先生は本当に前世の記憶を持っていないんだろうか
それと同時に、エルド先生が言うほどリヴァイ先生は怖くなかったなと
そんなことを考えてクラスに向かった
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