【】
シュッ...
シャッ...
ぶわっ....
クイナの式神の攻撃を避ける詩。
この数秒だが、わかる。
クイナはこの式神のアリスをコントロールしきれていなかった。
本家の式神使い詩が相手ではなおのこと。
そもそもこのアリスの宿主が長年苦しんできたんだ、一朝一夕で身に着けられてはたまったものじゃない。
このアリスとともに生まれ、成長した歳月がある。
しかし、クイナはここ1週間程度のもの。
仕組みはわからないが、そのスーツによって意思を奪われ、目の前にいるものを攻撃し続ける兵器と成り果ててしまった。
ー妹を、助けてほしい!
ケインの、言葉がよみがえる。
諦めるには、早すぎる。
今、目の前にいるのは人間だ。
「クイナ!
目を覚ませ!」
詩は叫ぶ。
「兄がすぐそこにいる!
家族のことを思い出して!!」
避けながら、近づく詩。
「ケインと約束したんだ。
クイナを助けるって」
必死な叫びにも、クイナは動じなかった。
「詩!それ以上近づくのは危険だ」
5人と戦いながら、翔は叫ぶ。
その時だった。
耳に押し込んでいた通信機のチャンネルが変わる。
メイン施設へ潜入していた部隊からだった。
「さっき月からの情報は受け取った」
月さん...!
そこまでやっててくれたなんて...!
詩と翔は戦いながらその通信をきく。
「こっちの施設の情報も合わせて、ようやく研究の全貌がわかってきたぞ。
そっちの状況は?!」
「2名が、スーツを着たアリス兵6名と戦闘中です」
戦闘中の2人にかわって、月が応える。
「なに?!
本当なのか?!
あの戦車とも互角にやりあう人間兵器と...!?
無事なのか!」
向こうは驚いている様子だった。
「それより...!
このスーツの解除方法教えて...!
この子たちみんな、子どもなんだっ!!」
詩は叫ぶ。
「殺したくない...っ」
「無理だ」
冷徹な声が響く。
え...
「奴らはもう、人じゃない。
左胸にアリスストーンが埋め込まれてる。
それを狙って銃で撃て。
....止める方法は、それだけだ」
「ざっけんな!!!!」
詩の怒りに満ちた声が響く。
月は通信室で頭を抱える。
非人道的ではあるが、奴らの言う止め方が一番、現実的だった。
しかし、詩がそのとおりにするはずがない。
でも自分の役目は、日本に無事で2人を送り返すこと。
そのための任務だ。
まわりに倒れる兵士たち。
首筋に残る吸魂の痕。
手を汚すのは、もう私で十分....
月は、銃弾を確認し、コントロールルームを出た_____
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