幼子の胸
「あーっあーっ
そっちはどう?
月さん」
月の荒い息がきこえた。
「大丈夫?!」
詩の声が大きくなる。
「生きてるわ。
腕を撃たれたけど、問題ない。
止血したところ」
「そっかよかった...」
詩は安堵する。
「こっちは施設の電力牛耳ってたやつ倒したから子どもたち解放できたよ」
「そういうことね。
あなたたちのいる区画だけモニターが映らないから心配してたところよ」
「やっぱ、この区画だけか。
こいつのアリス」
翔は意識のない雷男をみていった。
「ところで、何かわかったことあります?」
今度は翔が月と話す。
「今システムいじってるわ。
私、この手の専門じゃないから少し時間かかるわよ」
そうだな、と翔が思っている時だった。
「そんなの、ここにいるみんなにきけばいいじゃん」
詩の呑気な声。
だけど今回ばかりは、それが最短だったらしい。
「ねぇ、君たち、なんでここに閉じ込められてたの?
そのジャケット?ロボットスーツみたいなのって、何?」
しごく単純な質問だった。
その質問で、子どもたちはあっと、声をあげる。
「このスーツ、脱げるぞ!」
「ほんとだ!!ロックが解除されてる!!」
「やっとだ!!」
「やったぁー!!」
子どもたちは嬉しそうに、皆そのスーツを脱ぎだす。
「これ、お兄さんたちが解除してくれたの?」
その質問に、詩は首をかしげる。
雷男の管轄だったなら、間違いないか....
「まぁ、俺たちってことになるな」
詩は未だに何が起きたかわかっていなかった。
翔は、子どもたちが脱ぎ捨てたスーツを手に取り、じっくりと見る。
そして、あっと声をあげる。
「詩、みろ...
これ、アリスストーンだ」
えっと驚く詩。
他の子どもが脱いだスーツをしっかりとみると、左胸に、何か埋め込まれている....
それは紛れもなく、アリスストーンだった。
「なんだ...これ....」
詩が呆然としていると、ひとりの少年がやってきた。
「これのこと、奴らはアリススーツって呼んでた」
そう言って、倒れている兵士たちをみた。
「僕はケイン。
助けてくれて、ありがとう...
本当に、感謝してる」
ケインが差し出した手を、詩も握る。
「俺は詩。
そしてこいつは翔っていうんだ。
お礼なんかいらないよ」
詩は、いつものように笑った。
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