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幼子の胸



詩たち3人が潜入した施設には、多くの人々が隔離されていた。

捕虜というには、その年齢層が限られていた。

みんな10代くらいで小学校高学年から高校生くらいまで。

抵抗せずに、武装した兵士のいうとおりに檻のような牢に数人くらいずつ収容されていた。

そして皆、そろいの防弾チョッキ...いや、それよりも頑丈そうなスーツを身に着けている。





「みんな何を着ているんだ?」

通気口から下をのぞきながら、詩はいう。

「ひとりひとりを管理する装置だとしても、大きすぎるな」

翔も考える。

「詩、施設内はどうなの?」

月がたずねる。

「ああ、今全体把握したところ」

詩は、施設中に式神をしのばせていた。

「もらった設計図通り。

隠し部屋とかはなさそう...

収容されてる子たちも、ここで全部。

あ、いや待って...」

詩は、目をつむる。

「隔離された部屋が東側にひとつ。

式神は入って行けないけど、確かに感じるんだ...

...俺の石は、そこにある...っ」

はっとする翔。

「じゃあ、そっちに!」

しかし、詩は動かなかった。

「この子たちは、どうなるんだろう...

この施設は、なんなんだろう...」

「詩、今他国の問題に口出してる暇はない。

この子たちは、かわいそうだけど...

俺は詩のことも大事だ、詩のアリスのために、ここまでついてきたんだ」

しかし、詩の目はもう決まっているようだった。

「俺は、みんな救うよ」

「現実的じゃない」

月が言う。

これだけは、月と気が合いそうだと翔は思った。






「まずはコントロールルームを乗っ取る。

そして、子どもたちを解放し、東の隔離部屋に行く。

いいね?」

けっきょく折れたのは翔。

簡易的な段取りを組む。

「月さんはコントロールルームを乗っ取る。

システムに干渉し、俺たちの援護を。

その間にこの施設がなんなのか、情報があったら随時連絡してほしい」

月は頷く。

「混乱が起きたらそれに乗じて俺たちはここを制圧して、子どもたちを解放。

それからはもう、臨機応変に」

「おう、その言葉好きだぜ」

詩はいう。

「詩、分かってると思うけど、ここの施設の子どもたちを解放するなら、どのみちメイン施設もぶっ潰さなきゃ意味がない」

「ああ、そのつもりだよ」

「それがどんなことかって、ほんとにわかってる?」

「...お前には迷惑かける」

はぁ、とため息をつく翔。

ちっとも申し訳ない顔をしていないのが詩らしいといえばそう。

「俺のことじゃないんだけどな...

もういい、こうしてても時間が惜しい。

行こう」






月はひとり、コントロールルームに向かっていた。

長い間、久遠寺のもとでこの手の修羅場は何度もくぐりぬけてきた。

だからこれくらいの警備の網をかいくぐるのは容易いが、それにしても、警備がなまぬるすぎる。

副長が言っていた通り、ここはさほど重要な施設ではないのか...?

それとも、少数で管理できる仕組みが何か、あるのか....?

月は銃を構え先を進むのだった。








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