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幼子の胸



いよいよ、施設は目の前。

潜入直前の詩は、今までにないほど殺気だっていた。

それも、昨日見た映像が詩をそうさせた。

昨日は、丸一日移動に使った。

敵に気づかれないような慎重な行動が必要だったのだ。

そんな中、移動車に新しい情報が入ってくる。

それは、前線で戦う兵士たちからの映像だった。







初日に軍曹から見せられたのと同じような光景が広がっていた。

北軍はアリスが開発した兵器。

南軍は圧倒的なアリスの量で戦っていた。

そしてその中にみたもの、詩も翔も見間違うはずはなかった。

「そこ、もっと拡大して」

翔が言って、拡大したそこ。

式神のアリスが舞っていた。

映像から聞こえる声も、そのアリスについて話している。





「なんだあのアリス?!」

「見たことないぞ!!」

「あの鳥のようなもの...いや、紙のように薄い...しかし、炎が効いていない!」

「炎だけじゃない、結界も効いてないぞ!!」

「どうした?!」

「やばい!!

こっちへ向かってくる!!」

「退避だ!!退避するぞ!!」

悲鳴と共に、その映像は終わった。

その兵士たちがどうなったかは、わからないらしい。

そこから、詩の目つきはさらに鋭くなり、誰も近づけないような殺気を放っていた。

無理もない。

紛れもなくあれは式神のアリス...

それをあんなふうに使うなんて....

詩は、怒りで我を忘れそうになるのを落ち着けるので必死だった。






「詩...」

静かに翔は語りかける。

「気づいたか。

昨日もそうだったが、南軍で戦うアリスはみんな若い」

詩は頷く。

翔は、占いのアリスの“幼子”の意味が分かった気がした。

「もし、誰かがアリスを使って操ったり、望まない戦いを強いているなら...

そいつは、アリスを、人間を、道具としか思ってないやつらだ....」

翔は、唇を噛み締める。

「詩、俺は今、お前と同じ気持ちだよ。

そんなことする奴らが許せない...

誰かが死ぬだけの、こんな意味のない戦い、早く終わらせよう」

詩はまた、静かに頷いた。







詩、翔、月は、装備の最終確認をする。

月と翔は威力の高い銃を2つずつ。

詩はかさばるからと、小さいものひとつだった。

それらを身に着け、目配せし、3人は施設へと向かった。







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