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戦争のアリス



「今回襲撃する候補施設は3つ。

まず、衛星写真で見る分、一番大きな施設。

ここがメインの研究所だと思われる。

2つめは、その次に大きな施設。

全貌は謎だが、サブ施設だと思われる。

そして3つめ。

これは候補の中でも一番、優先度が低い。

以前は人身売買や捕虜などの隔離施設だったが、今は謎だ。

施設自体広くなく、機能しているかもよくわからない...」

作戦を立てる部屋に入り、地図を見ながら副長の説明を受ける。

翔はじっと見て、何か考えている様子。

詩はというと、こういうのは苦手だった。

「やっぱデカい施設どかんと吹っ飛ばしたほういいのかなー?

...翔はどう思う?」

考えるのは、翔に任せた方がいいのは知っている。

「...俺は、3つめの施設が気になる」

「え?だって一番優先度が低いって...」

言いかけて、詩は翔の目を見て黙った。

「うん!

翔がそういうなら俺たちは3つめのところへ行こう」

ぱっと、翔は顔をあげる。

「そんな簡単に決めて...」

「いいじゃん。

透視のアリスも邪魔されるほどの結界か何かのアリスが働いてるんだ。

考えたって無駄だよ。

その施設の規模だと俺たちだけで偵察は済ませられる。

あまり関係ない施設だってわかったら、候補地のうち、どちらかに向かって合流。

さっき会ったばかりの俺たちがそんなにすぐに連携できるほど、戦場は甘くない。

そうでしょ?」

詩の言葉に、副長は頷いた。

「最初は別行動で奇襲をかける。

混乱に乗じて各々の任務を遂行。

これでどう?」

みんな、異論はないようだった。







自室へ戻る途中、翔は詩へ話しかける。

「なんであの時すぐに...」

ああ、と詩は頷く。

翔の話をくわしく聞かずに、話を進めたことを言っているのだろう。

「翔だって何か考えて言ったんでしょ?」

詩は翔の細かな動作も見ているようだった。

「...人身売買っていうのが気になって。

南軍のアリスの使い方からみて...

それなりに人間が必要なのは明らかだ。

機械なんかよりも、難しい理論なんかよりも、人を視るほうが早い。

...お前の得意分野だろ」

にやっと笑う翔。

詩の手には式神があった。

「それで、どうだ?」

一番怖いのが、仲間内での反乱。

「別に、おっさんたちも俺たちをどうこうしようって気はなさそう。

一応、いい戦力ではあるからな。

まぁでも、状況次第。

なんかあれば要人だろうとなんだろうと、すぐに切り捨てる非情さだけはある」

「たいした度胸だよ...」

翔は言う。

「まぁでも、どちらにしろよかった。

俺たちは俺たちのやり方でできる。

ばらけたのは好都合だよ」

詩の力はどんな殺戮兵器よりも信頼できる。

とかいうと怒られるんだろうけど...

こういう生きるか死ぬかの場所では、どんな些細な綻びも命とりになるから。

誰にも邪魔はさせない...

今回も、俺はしっかりと詩を援護する_____








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