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戦争のアリス



今回の任務も少数精鋭。

飛行機も政府専用のプライベートジェットだった。

海外ということもあり、園部の時のように詩と翔2人だけとはいかないので、他にもメンバーはいた。

その中でも、アリスストーン奪還の先頭にたつ、実行部隊は詩と翔...そして...







コツコツコツ...





ジェット機内の床をハイヒールの音がして、その人物が自分の席へと座る。

お手洗いで席を立っていたらしい。

唇の左下のほくろが特徴的な女性。

その姿に、翔は目を細める。

そして小さな声で詩に言った。

「本当に、あの人も同じメンバーなんだな。

俺は反対したのに...」

「まぁもう、飛行機のっちゃってるしなぁ」

詩は相変わらずのんきだ。

「よくそんなでいられるな。

きいたところだと、あいつはお前が死にかけた学園での戦いで、

最後まで初校長側についてたやつじゃないか。

犯罪者と一緒なんて、俺は今でも反対だ...

あの感じ...なんか嫌なんだ....きらいなんだよ」

翔の言ってることは間違っていない。

そう、今回一緒にメンバーとして帯同するのは、久遠寺のもとにいた、“小泉 月”だった。

しかし、翔がこうも第一印象で人を嫌うなんて珍しいなと、詩は思っていた。

「...まぁ、犯罪者って言っても、最後にはこちら側についてくれたし...」

詩はあの戦いを思い出す。

最後に久遠寺を倒したのは、月だった。

長年その傍に居て、歪んだ心に気づかぬふりをしていた彼女。

認められたい、誰かに必要とされたいという気持ちが、彼女を戻ってこられぬところまで追い詰めた。

しかし最後は...そんな自分の心に打ち勝って、正義を選んだ。

月のことを、簡単に許すことはできないが、寂しくて暗い心、そして久遠寺によって突き落とされた闇を詩は知っているから、拒絶することはできなかった。





月は、意思のなくなった赤子の久遠寺を抱き、今までの暴挙、罪を自分も一緒に被ると言った。

彼の最期を、責任を持って見届けると...

そして今現在、久遠寺は月の言った通りこの世界から消え去っている。

ひとつの禊が終わった今、月は国の要請でこうしてこの飛行機に同乗しているのだ。

月には拒否権などなかった。





「そういうのが甘いんだよ」

ぽつりと翔は言う。

月は詩と同じ学園の暗部セクションにいて、こういう仕事に慣れているという点では戦力になるが、そういう問題じゃない。

かつての敵とこんなに早く手を組むなんて...信用に欠ける。

ましてや今回は国外、自分たちを守るものはほとんどないの地にいるのだ。

何が起こるか予測不可能なのに...






“吸魂のアリス”






自分もみたことのない、未知数のアリス...

彼女は本当に、俺たちの味方なのか...

翔は未だに信用していなかった。







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