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戦争のアリス



「いいのー?

こんなすぐ任務でちゃって。

弟くん、入学したばかりなんでしょ」




1か月会ってないだけで、久しぶりに感じるその赤髪。

また、隣には翔がいた。





「しょうがないだろ。

こっちのが急務」

へぇー、と翔。

「なんか意外だな」

とつぶやいた。

詩のことだから、最近アリス学園に入学したばかりの弟、奏のことを思って任務を延期するのでは...

と思っていた。

まぁ、任務内容も...“アリスストーン”が関わっているとなれば...

そう思いなおし、翔は窓の外をみる。

ここははるか上空。

陸地がどんどん遠ざかっていった。





「うっひょーやっぱすげえなひこーきっ

俺、初めて乗ったよーっ

なぁ翔!!

もうあんなに陸が小さいぞ!!」

詩は相変わらずいつもどおり、このはしゃぎっぷり。

「言われなくてもわかってるよ」

翔も一緒に、青々とした空とキラキラ輝く海面を眺めた。

「...じじいも、同じ景色みてたのかな」

詩はそう言って、ずっとずっと飽きもせずに外を眺めていた。





今日は、初めて飛行機に搭乗したというのもあるが、その目的地も、詩と翔にとっては初めての場所だった。

今回の任務地は“海外”。

任務とはいえ、アリスが国境をまたぐのは非常に珍しいこと。

さらには、他国への入国審査も非アリスとはわけが違う。

慎重な審査と諸々の許可が必要だし、すべての許可がすぐに下りることはまずない。

....らしい。

翔自身、半年前まではアリス村から出たこともなければ、アリス村は政府との干渉を一切断っていた。

しかし、詩がアリス村に来たことで、それも大きく動いた。

一部ではあるが、翔を通しての村との接触ができるようになったし、こと詩がついていればおのずと翔もついてくる。

この2人はある意味、特別視されていた。

今や日本の軍事力、アリス力のトップともいえる詩の力を増強させる歴史的名コンビの南雲の血を引く翔の存在は、政府にとっても手放したくないものだった。

しかし、詩以外に、翔をここまで引っ張り出すことは不可能だっただろう。

ゆえに、2人はこれまで以上に丁重に扱われていた。

今回、手続きや交渉に1年かかる見込みと言われていた件も半年ほどでこのように実現した。

一番は、他のやつには任せられないと駄々をこねた詩なんだけど...

そんなわがままで一国を動かせるなんて...

この国はどうなっているんだ...と思うが、長らく国政に関わっていない自分の立場からは何も言えまい。






今回の任務は、以前園部からアリスストーンを奪還した時の情報が元になっている。

あの件によって、園部は逮捕されていたが、ついこないだ、多額の釈放金を支払って刑務所からは出てきていた。

権力や金にものをいわせる悪人がまたのさばることになるのはつくづくいやになるが、園部の支持者はかなり減ったらしいから、努力も無駄ではないらしい。

そして、かなり詩にこりたらしい園部は有力情報すべて吐いたのだ。






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