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ヒーロー



「僕、

アリス学園に...行くよ」





奏はもう、泣いていない。

地に足をつけ、しっかりと立っていた。

その言葉は、家族全員、しっかりと聞いていた。





「奏...ほんとに...?

学園にいったら、卒業するまで...

父さんや母さんに会えない...

姉ちゃんにも...」

詩の静かな言葉。

奏はそっと振り向く。

こちらを見つめる家族の目。

不安そうな顔をしていた。

「それは...っ

それは嫌だけど...っ

でも、僕は...兄ちゃんみたいに強くなりたい!!」

小さな小さな弟の背中。

詩には大きく見えて、誇らしかった。






奏は、昨日の夜、同じベッドで詩と寝たことを思い出していた。





ー兄ちゃん、また遊んでね。

うん。

ー明日も明後日も、ずっと一緒にいられるよね。

...それは、できない。

ーえ...どうして....?

俺はまた学園に戻るよ。

ーせっかく、会えたのに...

大丈夫、また会いに来るから...

ーでもっ兄ちゃんがいたほうが、ママは喜ぶ!

うん。そうかもしれない...でも、まだやらなきゃいけないことがある...

ー家族よりも、大事なの...?

そういうことじゃない...まだ理解できないことかもしれないけど、これが、奏や父さん母さん、舞を守ることなんだ。

ー兄ちゃんは、つよいの?

ああ、強いよ。

ーなんか、スーパーヒーローみたいだね。

そんなかっこよく言ってくれるの、奏だけだ。

ーだって強いんでしょ?じゃあ、ヒーローだ!

はははっいいね、それ。

ーその...アリス学園に行ったら、ヒーローになれる...?

.....さあな...それは、自分次第。

ー自分、次第...?

決めるのは、全部自分だ。

さ、もう寝なよ奏...明日はパパがお出かけに連れていってくれる....




「兄ちゃん...学園に行ったら、兄ちゃんみたく強くなれる...?

僕も、強くなって...

家族を、守れるかな...

誰も傷つけずに、このアリスを使えるようになりたい!」

詩はぽんっと、肩に手を置く。

「大丈夫。

奏はもう強いよ。

...でも、もっと強くなれる」

詩と交わる奏の視線。

ああ、大丈夫だ...と詩は安心していた。








母、琴はいつのまに成長していた奏のことを思い、涙を浮かべる。

父は、奏の頭をしっかりとなでる。

「奏は、パパの自慢の子どもだ。

もちろん、お前の兄ちゃんの詩も、お姉ちゃんの舞も...」

奏は、唇を噛み締め、頷いた。

「奏、舞を助けてくれて...ありがとう。

奏は、ママのヒーローだね。

式神のアリス...素敵な力だね」

琴はそう言って、笑った。

ママが、笑った。

それが、嬉しくて嬉しくて。





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