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兄弟



「アリス...学園...?」




奏は、耳馴染みのない言葉にぽかんとしている。

母、琴は今にも泣きだしそうな顔だが、詩の言っている意味はわかっているようだった。

父も、いつかこうなる日がくるだろう...と、心の中では思っていた。





詩は、母に目を向ける。

「奏に、アリスの説明は?」

琴は、目をつむり首をふる。

「その力を...使ってはいけないと...

それだけ言い続けた。

...外出もむやみにさせられなかった。

...それしか、私たちにはこの子を守る方法がなくて....」

そっか、と詩はつぶやく。




「やっぱり、奏はアリスだったの?」

離れたところで、舞が言った。

「舞...」

琴はつぶやく。

「アリス学園...いつかママが言ってた。

お兄ちゃんはそこに行ってて、家族に会うこともできないし、連絡もできないって...

ママとパパは、アリスとお兄ちゃんの話を避けてた。

だから、何もきかなかった...

ママが、悲しそうな顔をするから...っ」

その言葉に、奏は心配そうに母を見つめた。





「友だちが言ってた。

アリスは危険だから、特別な施設に隔離されるって。

奏がその力を使うと、ママは怒るし...

...今だって、ママが泣いてるっ

あなたは、怖い人なの?

ママに、何かしたの?

...奏を、どうするつもりなの?

どこに、連れて行くの?」

不安で、怖くて、何もわからなくて、何が起こってるのか理解できなくて...

急に現れたアリスの兄が、弟を連れていくと言っているんだ。

舞がそう言うのも、無理なかった。





「違うの...違うの、舞...」

母は、首をふる。

詩はすっと立ち上がった。





「俺はアリスだよ。

式神のアリスって言って、俺たちのじいちゃんもそうだった」

ふわっと、詩のまわりに何の前触れもなく式神が現れる。

それは、詩の手に倣って、統率のとれた動きをし始めた。

人型のような白い紙が、くるくると鳥のように、自由自在にリビング内を飛び回った。

すごいっ!と目を輝かせる奏のまわりを踊るように飛び、ふわっと舞の横を通り過ぎる。

その風が、舞の黒い髪をなでた。

最後に両親のまわりを1周してから、式神たちはきれいに整列し、そろえてお辞儀する。





「すげえ!!

兄ちゃん!!

すごいよ!!

でも僕も...っ

同じのを出せるんだ!!

ほらみて」

言いかけて、奏はちらりと母を横目でみる。

いつも、人前で出してはいけないと言われてきたものだ。

でも、目の前の兄、詩はやさしく笑いかける。





「出していいよ...みせて」

その言葉に奏は、一層嬉しそうな顔をした。

そして、ぱんっと頭の上で手をたたく。

その拍子で、式神がぶわっと舞った。

同じ、式神のアリス...

自分以外のそれを、初めて見た詩も、なんだか嬉しかった。





「奏...

これがアリス、式神のアリスだよ」





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