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家族へ



もうすぐだ...

この川沿いを進めばあとは...

行き先を確かめながら歩く。

そんな時、声が聞こえてふと立ち止まる。





♪~~♪~♪~~~





これは...

誰か、歌ってる?

聞いたことあるような、ないようなそんなメロディー。

だけど、ひとつだけ言えた。

すごくうまい。

惹きつけられる、なんだか心があたたかくなるような声だった。

そして気づく。

歌っていたのは川沿いの土手、そこに座っている女の子だった。

思いのほか幼くて驚く。

しばらく聞き入ってしまった。





はっとして、女の子は詩の気配に気づき歌うのをやめた。

長い黒髪を振って、こちらを向いた少女と目が合った。

驚いている...というか、怪しまれている...?

無理もないか。

ここらへんじゃみかけない派手髪の男がじっとこちらを見ていたら、怖い、よね。

詩は思いなおすも、女の子はバタバタと荷物をもって、立ち去ろうとしていた。

「あっあの....!」

女の子は、一瞬手をとめる。

「君の声...すごくきれいだった。

お世辞とかじゃなくて...

ほんとに、感動したんだ」

詩はそういうも、もうその子は目を合わせることなく、走って行ってしまった。





うわぁーやっちゃった....

絶対不審者だと思われた...

これ通報されないよね?

されたらめんどくさいことになるなぁ....

詩はそう、嘆きながら目的地へと向かうのだった。

どうも昔から、突発的な行動と思ったことをすぐに口に出すくせは直らない....





目的地へ向かう足が、どんどん重くなっているのは自覚していた。

どれくらい時間をかけただろうか。

とうとう、目の前にその家はあった。

何度も何度も、表札と、メモに書かれた名前を交互にみて、確認する。





“枢木”(クルルギ)




あとは、インターフォンを押すだけ。

ただそれだけ。

たったそれだけなのに、どんな動作よりも重く感じた。

はぁ....

何度目かの深呼吸をして、次こそは、と人差し指をインターフォンに近づけた、その時だった。





ガチャッ




ドンッ




なんの前触れもなく、玄関のドアが開いたのだ。

咄嗟のことで、心臓が飛び出そうなくらい驚き、尻もちをつく。

そして、その目線の先にいたのは....

幼い、男の子だった。





その子を見た瞬間、詩は悟る。

ああ、やっぱり....

すぐにわかった、この感じ...




男の子は、不思議そうに首をかしげる。





「にーちゃん、だれ?」




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