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東雲 時



やっぱり...





詩は神社の裏手の墓地にきて、確信する。

誰かが、手入れしてくれている。

それも、定期的に。

一瞬、式神の姿を探したが、そんなことないなと思いなおす。

不思議に思いながらも、墓の前へときた。






“東雲家”

そう書かれた墓標。

後ろには、時と祖母の名前。




よかった、ひとりじゃなかった...




東雲家の代々伝わる墓には入っていないと、祖父に関する情報はもらっていた。

しかし、どこの墓に入ったかはごく一部の人にしか知らされていない、と。

でも、それを聞いたとき、確信した。

じじいはきっと、ここにいると....

幼いころ、毎朝時はここで手を合わせていた。

その時はよく意味はわからなかったけど、そのじじいの横顔があまりにも真剣で、とてもやさしげで、それから最後に愛しそうに笑いかけていたのが印象的で、記憶に残っていた。





詩はそっと、花をたむける。

あの時のように、見様見真似で手を合わせた。





じじい...

そっちで元気にやってるか?

自慢の奥さん...俺のばあちゃんと、仲良くやってるか?

俺は、相変わらず元気だよ。

あの時、生かしてくれてありがとう。





一度心臓が止まったが、式神のアリス...じじいのアリスが起こした奇跡で、戻ってこられた。





命をつないでくれて、ありがとう。

守ってくれて、ありがとう。

そっちではもう、何も気にしないでただただ笑っていてくれ。

もう、俺の心配はいらねえからな。





最後に詩は、墓石に向かって、にっと笑いかけた_____







じじいの神社がある村は、あたたかい場所だった。

小さな商店に村の人が集まっていた。

詩ものどが渇き、寄ってみた。





「お、兄ちゃんここいらでは見かけないね」

ひとりが陽気に声をかける。

「そうっすね、墓参りにいってきたところです」

「あいやー若いのに偉いねえ。

うちの息子にも見習わせたいわ。

あの子は全然帰ってきやせんからねえ」

「そういやあんたのとこの、タカシ最近みねえもんなぁ」

「そうなのよったくあの子もねえ都会の暮らしがそんなに楽しいんだか」

そんな話を聞きながら、瓶のラムネをのむ詩。

あっと、気になることを思い出した。





「すいません、あの...

坂の上の神社、今は誰が管理しているかわかりますか?」

「あーあの、東雲さんの神社ね」

あーと、頷く皆。

この村では知らない人がいないらしい。

「あそこなら、みんなで交代で手入れしてるんだよ」

えっと、驚く詩。

「なーに、東雲さんにはお世話になったけえ。

これくらいどうってことないよ。

年寄りにはいい運動だ」

みんな、笑顔で頷いていた。

そんな中、ひとりがあっと声をあげる。





「もしかしてあんた、東雲さんとこの孫かあ?

あの...ほら、なんて言ったっけ」

「あーうたくん?!」

信じられない、と言った様子のみんなの視線を一挙にあびる詩。

詩もまた、驚いていた。





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