赤髪の転入生
「はいっ
こちら俺の直属の後輩、現危険能力系代表の日向棗君でーす!
中等部生だけど、初等部の時から幹部生の超エリート。
不愛想でぜんっぜんかわいくないけど、ほんとはツンデレだからそこはご愛敬ってことで、
はい、よろしくーっ」
はあ。
なんだろう、この温度差。
めちゃくちゃこっち睨んでるし詩の言う通り不愛想。
ほんとに仲いいのかと疑いたくなる。
「ほら棗!あいさつは?」
まるで幼児のそばにいる母親のようだ。
「ったくもう、ごめんなさいねぇこのこったら、恥ずかしがり屋でっ」
そう詩がふざけた途端、ぼっと詩の顔付近で炎が燃えたから驚いた。
「ぶわっかやろーお前!
あぶねえだろ!!
このくそ生意気な後輩があっ」
さっきの余裕はどこへやら。
どちらが年上かわからない短気ぶりだ。
でも、なるほど...
発火能力か。
危険能力系ね....
その瞳をみれば、くぐりぬけた修羅場の数くらい想像できる。
こいつは、かなりやる...
翔はそんなふうに感じていた。
「ったくもー
翔は俺のアリス取り戻すだけじゃなくって、今井兄妹の捜索にも力貸してくれるってんだから、
少しは愛想よくしろよー」
そんな詩の言葉。
今井兄妹というワードにかすかに、棗が反応したのを、翔は見逃さなかった。
この目は知ってる。
何かを決意した時の目。
大事なものを守ろうと、闘志を燃やす目。
詩と、同じ匂いがした。
確か、前に詩は言っていたっけ。
俺と棗は、一回死にかけた...
というか、死んだんだ...
一度は決まった運命を捻じ曲げてでも、戻ってきた意味。
ここにいる意味を、俺たちは全力で探してる。
「お前、強いだろ」
何を話すかと思えば...
この好戦的な目、嫌いじゃない。
「うん、詩よりもね」
余裕の笑みで返す翔。
はっ誰がそんなことを!
と後ろで詩は騒いでいるが、翔と棗は目をそらさなかった。
「心配しなくても、俺がいれば詩に無理はさせないよ」
何か、はっとした様子の棗。
さっきの、好戦的な態度はなくなっていた。
「詩を、頼む」
ただそう、翔にきこえるだけの声で言った。
ふぅん、いい仲間じゃん。
詩。
お前の仲間は、思ったよりも何倍も....
何十倍もいい仲間だ....
そんな気を知ってか知らずか詩は何かに気づいてあっと手をふっている。
「るっかぴょーん!!ちょうどいいとこにきたー!!
翔、学園の誇る金髪貴公子!!
るかぴょん!!
めっちゃかわいいだろ?
女の子みたいだろー??」
「か、かわいいっていうな!」
うざがってはいるが....
確かに、詩のいうとおりかわいい...
そんなこんなで今日も、詩はにぎやかだ。
詩のおかげで、慌ただしい毎日だけど一つだけ言える。
詩といるのは、やっぱり楽しい。
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