赤髪の転入生
アリス学園高等部校長室_
「南雲 翔くんだね、
アリス学園へようこそ。
特例措置として、君の編入を許可し、歓迎します」
高等部校長、行平は落ち着いた様子で迎えた。
「急なことにも関わらず、このようなはからい、感謝しています」
翔はそう、丁寧にお辞儀して応えた。
いい、佇まいだ___
あの有名な南雲家たる所作と、噂にたがわぬ、否、それ以上の雰囲気。
行平は、素直にそう思った。
東雲家とはまた違う強さを感じた。
ちらりと、後ろで落ち着きなさげに、緊張感もなく立っている詩と見比べる。
こちらは、怖いくらいに静かだ____
同じようなことを感じ取っていたのは、同席していた志貴だった。
一歩前に出る。
「君に会えてうれしいよ。
詩からきいているとは思うが、君の遠い血縁で同じ結界のアリス。
この学園では中等部校長を務めている、
志貴 雅近だ。
何かこの学園で困ることがあれば頼るといい」
差し出された手を、そっと握る翔。
「こちらこそ。
お目にかかれて光栄です。
今回の件、一任してくださったと聞きました」
翔は、詩をちらりと見て、また視線を志貴に戻す。
「無茶な申し出を実現させていただき、ありがとうございます」
頷く志貴。
「礼には及ばない。
ただ、1週間前に詩から連絡を受けた時には正直、無理だと言ったんだ。
でも、詩は...」
鋭いさすような志貴の視線は詩に効果がないのだから仕方ない。
「志貴さんならなんとかなるって思ったし、実際ほら!
なんとかなった!」
こちらの気苦労も知らず...と、志貴はあきらめたようにため息をつく。
翔も、この詩の心臓の強さには感心せざるをえなかった。
「中等部校長、南雲家との血縁、長らく実現されなかったアリス村との交流...
すべての権限を行使した」
そう平然と言ってのける志貴もまた、すごい人だと、翔は思った。
「その中で...元中等部校長である姫宮にも力添えをいただいた。
それで...君に...興味を示している」
志貴の言い方が少し気になった。
「そういうわけだから...ぜひ一度、姫宮のもとに顔を出してほしい。
姫宮も病床に伏してはいるが、君が訪れることを心待ちにしている...」
心待ちにしている...?
なんとなく意味がわかった詩は、ご愁傷様、と思うのと同時に、面白そうだから何も言わないでおこうと心に決めた。
「そういうことであれば、ぜひ...
整い次第、こちらから出向きます」
翔は少しひっかかりながらも、了承した。
「さて、それでは前代未聞、あっという間の時間になるとは思うけれど
同じアリスとして、校長として、君の学園生活の幸運を祈るよ」
行平はそう、伝えた。
翔は頷いた。
「では、彼の学園生活もろもろについては詩くん、君に一任する。
よろしく頼むよ」
「はいっ
もちろん、任せてください!」
元気な詩の声。
翔は、こいつは場所を選ばずこうなんだな、と思うのだった。
それをわかっているのか、行平も静かに頷いた。
こうして俺、南雲翔のアリス学園での生活が幕を開けたのだった____
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