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向かう場所



村を出て、用意された車に乗った2人。

そこでやっと気を抜いたのか、翔があれっと声をあげる。

白装束の袖の中、何か質量のあるものがあることに気づく。

「これ...っ」

取り出して気づく、それ。

詩も気になって覗き込む。

「これ、アリスストーン?」

詩の言う通り、翔の手にそれは収まっている。

「ああ...じじいのだ...」

「え、南雲のじいちゃんの?

...すげえ、これ...」

もたなくてもわかる、重量感の伝わる純度の濃いアリスストーン。

赤色...だけど棗の炎のような赤ではなくて、オレンジに近い、目も覚めるような朱色だ。

今までみたことのないアリスストーン。

輝きというかなんというか、石から、生命力のようなパワーが感じられた。

握ってしまえば隠れてしまう程度の大きさなのに、その存在感には圧倒される。

まるで、そう....命のかけらと言う言葉が似合うくらいに...

「初めて、もらった...」

そうつぶやき感動している様子の翔とともに、詩もまた、じっとその輝きに見入った。






そして、はっとする。

急いで自分の服のポケットに手を入れる。

「お、俺も...っ」

「まさか、それって....」

詩はつばをのみこみ、頷く。

「たぶんこれ....俺の..じいちゃんの....

志貴さんが言っていた特徴に、よく似ている....

俺が死にかけた時...俺の中に入った石と同じ...

じじいの、式神のアリスストーン....」

それは翔のもつものと同様、純度が高い。

同じ藍色でも、自分が作る石よりもはるかに色が濃くて、何より持った時の感覚が違った。

「うわっなにこれっ」

詩は、ポケットから石とともに出てくる葉っぱをはらう。

見ると、翔も同じようにはらっていた。

いくら山を転げまわったとはいえ、こんな奥にまで葉っぱが入ってくるとは思えない。

だとすれば、考えられることはひとつ....




「紅蘭...」

ぽつりと翔はつぶやき、詩もまた、くすっと笑って翔と顔を見合わせた。







その頃、山の上に戻った十次は面をかぶりなおし、紅蘭に問う。

「うまくいったか...」

「うん。

2つとも、言われたとおりに」

「ならよい...

せめてもの餞別じゃ....」

十次はそれだけ言って、南雲邸に戻っていった。

少し寂しそうなその背中。

無理もないか....




紅蘭はそっと、しばらくは南雲邸で寝ようかなと思うのだった。

少し不器用なところは、十次も翔もよく似ているなと、思った。





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