守り続ける
轟音、爆音、鳴りやまない銃弾、火を噴く大砲....
人が焼ける匂い、人が壊れる音、耳をかすめた銃弾の音...
さっきまで生きていた人間が、次の瞬間には息絶える。
足や腕に銃弾や爆撃を受け、苦しみもだえる仲間の声。
いっそ、殺してくれ...と強く掴まれた腕。
一瞬にして、散る命。
戦場にいると、感覚が麻痺する。
こんなにも人の命は儚く、もろく、軽いものかと...
人を壊すのもまた、人。
こんな狂った世界...
何が楽しくて、何が美しくて、生きているのだろうか。
そう思っても、この手を止めたら次にやられるのは自分だった。
死にたくなかったら、目の前の敵を倒さなければならない。
この戦いに、終わりはあるのだろうか...
僕らに、未来はあるのだろうか...
戦場で獣のように叫び、無造作に式神をまき散らす相棒。
かつては、友と呼び合い、野山を並んで駆け巡ったこともあった。
しかし今では、その背中をただ見つめることしかできない。
いてもたってもいられなくて、戦禍の中に飛び出そうとすれば仲間に強くとめられる。
3人がかりで、連れ戻される。
「僕がっ僕がトキを止めないと...っ!!」
「ダメだ!
今はダメだ!!
敵の中に飛び込むことになる!!
いくらお前が結界使いでも、敵が多すぎる。
俺たちは、ここでトキを援護するしかないんだ。
それに、今のトキは敵味方の区別さえついていないかもしれない...」
獣のように叫び、我を忘れて式神を敵に向ける彼は、もはや人とは言えなかった。
みんな、目を背けていた。
今ここは、トキがいるからみんな無事だというのに...
また、僕は何もできないのだろうか。
守るって言ったのに。
ひとりで戦わせないと誓ったのに...
所詮、僕の力は....
そんなこと、思ってたまるか。
僕が諦めてなるものか。
「うああああああああ!!!!
戻ってこい!!!!
トキーーーーーーー!!!!」
仲間と上官の制止を振り切って、十次は、銃弾の中へと駆け出していた。
結界でぎりぎり銃弾をよけ、なんとかトキのそばに行く。
そして、式神が飛び交う中、躊躇することなく正気を失ったトキの腰へと抱きついた。
かっこ悪いけど、無我夢中だった。
それしか、方法が見つからなかった。
そのまま一緒に倒れこみ、ありったけの力で叫んだ。
「何やってんだバカ野郎!!
お前が死に急いでどうするんだ!!
お前が今やるべきことは、秋が生きたかった明日を、生きることだろ!!
秋みたいな人を出さないことだろ!!
お前が式神にのまれてどうするんだ!!
僕の知ってるトキは強い!!
誰よりも強い!!
式神なんかに負けないんだ!!
トキ!!
聞こえてんだろ!!
聞こえてるなら、もう、力任せにその力を使うな!!
僕がいる!!!
お前の隣に僕がいることを忘れてんじゃねえ!!
バカ野郎!!!」
爆音、轟音が響く中、負けじと力いっぱい叫んだ。
そのせいか、頭がくらくらした。
いや...
なんだこれは...
腕から、生温かいものが流れ出る。
抑えた手は血で染まる。
「十次!!」
よかった。
これはいつもの、相棒の声だ...
そう思うと安心して、気を失った。
トキが、戻ってきてくれた____
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