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守り続ける



次の日から、十次による鬼のような厳しい鍛錬が始まった。

南雲邸に泊まり込み、朝早くに起き、夜遅くまでの鍛錬が続いた。

なぜかずっと、翔もそれに付き合ってくれていた。

山の中の走り込みは、アップダウンが激しいうえに、足場もわるい。

気を抜けば谷へまっさかさまだ。

南雲邸に戻ると、十次の指導の下、武道の組手と打ち込みが始まる。

翔の動きにはついていくのがやっとだった。

早く追い付きたい、それだけの思いで毎日必死だった。

ある時は、山の中の滝で何時間経ったかわからないほど滝に打たれ続ける滝行を行った。

静かに無で滝に打たれる翔の隣で、あまりの寒さに最初はぎゃーぎゃーうるさく言っていた詩。

十次に尻を叩かれていたものの、次第にそれも減り、翔と同じように静かに打たれ続けられるのにも慣れてきた。

十次がそう、感心するのもつかの間だった。

「でもやっぱ寒いもんは寒いからーーーーっっ」

詩はそう声をあげて逃げ出す。

「こらぁ詩ーーーーっ!!!」

そのあとを年寄とは思えないスピードで追ってくる十次。

そんなやりとりは日常茶飯事だった。

「おまえ、ほんとうるさいやつだな」

そう、翔が言ってあきれるのも無理なかった。

「うっせーなぁ。

お前ほんとに人間かよ、あんなの平気で受けれるなんて」

「余裕でしょ。

お前が弱いからじゃね」

カチン。

と詩がきたのは言うまでもない。

食事中だというのにやいやい言いあう2人を見かねた十次から、2人とも鉄拳をくらったのだった。

「いってぇよじいちゃんーっ」

涙目の詩。

「俺にまでやんなくったっていいだろ」

そして不服そうな翔。

ぶつぶつ言おうものならもう一発飛んできそうだったので、2人は静かに箸をすすめるのだった。

翔とは、この修行でずいぶんと距離が縮まったように思えた。

夜は隣に布団を敷いて一緒に寝た。

そこでは、いろんな話をしていた。

翔はアリス村のことを教えてくれたし、詩はアリス学園のことを話した。

「それでなっ

棗っていうくそ生意気な後輩がいてだな...あとは殿っていうエロ...だな...あいつは...もう....」

いつも詩は話しながら寝てしまう。

それに驚かされるが、連日ハードな修行なのだから仕方ないのかもしれない。

「もう寝たのかよ...」

寂しいような、でもまた明日、詩と修行できるのが楽しみのような...

そんなことを思って、眠りについた。






「そう、そこっ」

「違う、腕が伸び切ってる」

「後ろも油断するな」

翔は、自主練にも付き合ってくれるようになった。

どこがだめなのか、的確にアドバイスしてくれる。

たまに、紅蘭や黒峰、ユウヒ、てまりたちも、様子を見に来てくれるのだった。

ユウヒは早く詩と遊びたくてうずうずしていた。

「詩兄、いつ遊んでくれるのー?」

「ごめんなユウヒ、また今度なぁ」

「えーっこないだもそれ。

みんな待ってんだぞ。

ほんとだよ?」

「わーかってるって。

修行が終わったら、いっぱい遊ぶから覚悟しとけよー?」

あっという間に子どもたちからの信頼を得ている詩に、黒峰や翔は感心しているのだった。






「どうなの?彼」

黒峰はそっと、翔に問う。

「まあ、粗が多いけど...

成長のスピードはびっくりしてる」

「そうみたいね。

あなたたちもすっかり仲良くなったみたいで」

黒峰はいたずらっぽく笑う。

「そうか?」

戸惑う翔。

「ええ。

あなたのそんな楽しそうな顔、久しぶりにみたわ」

翔は自覚がなかった分、少し恥ずかしくなる。

「でも、確かに...

あいつは楽しいやつだと思う...

不思議なやつだ...」

翔の言葉に、黒峰はうんうんと頷いた。







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