南雲対東雲
お前はその程度か____
先ほどの、測れなかった強さは、たまたまか...
ならば、ここで終わりだ。
ーフェイントと本気を見極めてっ
紅蘭の言葉を思い出す詩。
今まさに、南雲の踏み込んだ足がそうだった。
やられる...っ
ザッ
ガッ
バシッ、バシッ、バシッ____
立て続けに入る正確な南雲の攻撃。
面の奥の南雲の目に、光を感じた。
「くっ」
パァァンっ
詩のもっていた竹刀が放り出される。
皆、その瞬間決着を確信した。
なんだ、ここまでか...
やはり南雲様は強かった...
がんばったよ、東雲詩...
皆が、そう思っていた。
しかし...
今、こいつわざと...?!
南雲だけが、手に残る感覚の違和感を感じていた。
そして気づいたときには、遅かった。
バランスを崩したと思っていた詩は、攻撃を受けた瞬間身をよじり、ありえない体勢から地面を蹴る。
「なっ」
そのままのスピードにのせ、詩は南雲のもつ竹刀へと蹴りを入れた。
パァァンっ
竹刀は南雲の手から離れ、音をたて、地面に転がった。
「わざと、攻撃を...っ」
詩は、この時を待っていたのだ。
カウンターを狙うために、南雲が全神経を集中する攻撃を見極めることだけに、エネルギーをつかっていた。
たとえその攻撃を受けようとも...
「ふっ
お前の使った手だ」
詩は得意げに笑う。
南雲は、1週間前、肩に受けた式神による傷を思い出していた。
自分の攻撃を正確に当てるため、避けれるものをわざと受けた。
それを、もう自分のものとして実戦でとりいれてくるなんて...
ますます、気を抜けない____
先ほどの未知数の意味が少しわかった気がした。
こいつの成長スピードは、異常だ。
戦い中でさえも、すべてを吸収して、強くなる_____
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