山の試練
それからは、目にもとまらぬ速さの攻防が続いた。
お互い、決して一歩も譲らなかった。
きっとこの山は彼らにとって特別な場所。
この山との一体感を感じた。
そんな彼らに唯一勝てる方法は...
ざっ
詩は式神を広範囲に広げた。
俺はなんとしてでも、頂上にいかなければならない。
ー山はあらゆる手を使ってお主を試してくる...
アサ婆の言葉を思い出す。
彼らが山と一体になっているのなら、俺も、一体になればいい...
この自然を感じて...
詩は息を吸い込む。
散らばった式神と共鳴する。
流れる水、吹く風、木々の匂い、山の鼓動...
感覚を研ぎ澄ませる。
ここか...っ
詩の定めた狙いどおり、1枚の式神が少年へとまっすぐ向かう。
すんでのところで少年は避けるが、その式神が装束を引き裂いた。
それにしても、アリス以前に2人の身体能力が高いことに詩は驚いていた。
アリスなしでは、戦闘において確実に自分の方が劣っている。
あんなに動きにくそうな服装なのに、その身は小動物のように軽く、鹿のように軽快で、攻撃の時の気配は獣そのもの。
なんで、こんなに強いんだ...
詩は感動を覚える。
俺も、強くなりたい...っ
ざっ
ざざっ
植物と風の同時攻撃を受け流し、そのままカウンターで式神を向けた。
少女は飛びのき避けるも、少年は避けずにもろにそれをくらう。
え...
と予想外のことに一瞬驚いたのを少年は見落とさなかった。
ぶわあっ
一段と強く鋭い風が詩を襲った。
くそっ
詩は空中でバランスを崩した。
しかし彼も、詩から受けた攻撃が効いている様子。
同じようにバランスを崩す。
次だ。
次で決まる。
着地したらすぐに...っ
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