探し物
目の前に広がる壮大な海。
どこまでも果てしなく続くその光景は、ため息が出るほど美しい。
「やっとこの日が来たな...」
詩がそうつぶやけば、隣でも頷く影。
5年で、ずいぶんと背が伸びたなと感慨深く思う。
その燃えるような赤い瞳は、鋭く浜辺に注意を向けていた。
「せっかくの景色も悠長に見てられないみたいだな」
目下では、案の定、外国の組織と思われる者たちが、1人の少女と他2名を襲いにかかるところだった。
「何言ってんだ...目的はこれだろ。
今までどれだけ待ったと思ってんだ」
今にも飛び出していきそうなほど、隣の彼はいきり立っている。
「おいおい、指示は俺が出すんだぞ。
タイミングをみて...」
そう言うか否か、次の瞬間詩は行動に移していた。
それは彼らが使ったアリス...
ーシャッ
舞い上がる、白いもの。
「ぜんぜん使いこなせてねーよ。
本家の式神なめんな」
「...お前のほうが冷静じゃないだろ」
詩の姿が、さっきまで殺気立っていた自分の感情を逆に冷静にさせていた。
棗はため息をつき、その後ろ姿を追った。
「お前らは俺の怒りを二度かった。
1つは、俺のアリスを勝手に使ったこと。
もう1つは、俺のアリスを....
蜜柑に向けたこと____」
目の前に佇む少女はただただ呆然としていて、状況が呑み込めていない様子。
無理もない。
やはり、記憶は完全に消されているようだ。
それにしても、成長したなと思う。
5年前の小さかった蜜柑...お前は....
途端によみがえる記憶。
棗のいうとおり、ここまで本当に長かった。
そしてこの少女が、蜜柑がまた目の前にいるという奇跡....
記憶が、感情があふれ出す____
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