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アリス村



勢いよく路地に逃げ込んだ先。

その道のど真ん中に老婆が佇んでいた。




「ばあちゃん!

そこ危ないからどいてっ」





詩が慌てて叫ぶも、老婆は動かなかった。

詩は一瞬考えるも、次の行動に迷いはなかった。

このまま追手の攻撃を避けると、この老婆にあたってしまう。

詩はきゅっと踵を返すと老婆の前に立ちはだかった。

志貴さんごめん...っ

ここで俺がやられるわけにもいかないし、関係ない人まで巻き込むのは絶対に避けなければいけない。

追手たちは、ふっと一瞬、気配が変わるのを感じた。

何だ...今のは...

皆が思ったときには、すべての攻撃が跳ね返されていた。

四方八方から降りかかるあらゆる種類のアリス攻撃を、一気にはねのけた力。

はらりと、誰かの足元に式神が落ちた。

これは、この青年が...?

村人は口をぽかんとあける。

しかしすでに当の詩は、村人たちなど眼中になく、老婆に手を貸していた。

「ばあちゃん、ケガはないか?」

フードを深くかぶった老婆は少し頷いたようにみえた。

「ごめんな、俺のせいで。

家どこだ?

送ってくよ」

「お主...」

老婆のしわがれた声。

「え?」

詩が聞き返すも、またも村人たちの声があがる。

「お、お前もしかして....

式神使いか....?!」

びしっと詩を指さし、怯える村人。

「そうだけど、なんでこのアリスを知ってるんだ...?」

詩の肯定に、その場はどよめく。

「そ、そんな...

これが南雲さまに知られれば...」

「ああなんということ...」

「追い出すだけでは済まないぞこれは...」

途端に、村人たちの目が変わったのは、詩にでもわかった。

これは、あの目だ。

恐れる人の目。

何度も向けられた、軽蔑の視線。

そしてこの、殺気。

先ほどとは話が違う。

ここで死ぬわけにはいかない...

たとえそれが、志貴との約束を破ることになっても...

詩は覚悟を決めた。

「ばあちゃん、ちょっと下がってて...

一気にいくから...」

そう詩は言って、村人たちを見据えた。

同時に向かってくる、先ほどとは比にならない村人たちのアリスによる総攻撃。

詩もまたその力を出そうとさらに気を張った時だった。

視線の端で老婆が、深くかぶっていたフードをぬいだ。







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