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しん友へ(回想)



櫻野と昴は、何か決意した目で、職員室へと向かっていた。





あの騒動が起きてから、5日後。

詩は未だに教室に現れていなかった。

寮の扉を叩いても、音沙汰なく、誰もいる気配がなかった。

きっとまだ、ひどい罰則が...

そう思うといてもたってもいられなくて、2人で職員室へきていた。





「先生っ」

「あら、櫻野くん、今井くん、どうしたの?」

国語の先生は珍しい、とこちらを向く。

「あのっ

詩のこと、許してあげてほしいです。

お願いします」

櫻野は頭を下げる。

「あいつ、素直じゃなくて、みんなの前ではやな奴だけど...

ほんとはやさしいから...」

昴の言葉に、櫻野も食い気味で言う。

「あの時詩は、僕のことで怒って...!

だから、だから....

詩のこと、許してください」

「僕たちが、詩に宿題やらせますからっ

お願いします...っ」

詩は、意地を張ってたのもあるのだけど、書けなかったんだ...

届かない手紙に、なんの意味があるのか...

そもそも書いて、家族は受け取ってくれるのか....

怖かったんだ___

昴も、深く頭を下げた。





「2人とも、顔をあげて」

やさしい先生の声。

顔をあげると、先生は笑顔だった。

「詩くんの友だち...いや、親友って、あなたたちのことだったのね」

先生の言っている意味がわからなくて、ぽかんとする2人。

「大丈夫。

詩くんはもう、普通の生活に戻ってるわよ。

今日は来てなかったけど...たぶん、寮にいるんじゃないかしら」

2人は目を合わせる。

「それに、宿題も昨日、ちゃんと受け取ったわ。

私にも、あやまりにきたのよ」

えっと、声が重なる。

そして、

「「嘘だ」」

びしっという2人。

「詩が素直に謝るわけない」

「宿題やってるのなんか見たことない」

うんうん、と頷きあう2人。

それには、あはははっと笑う先生。

「あなたたち、ほんとにおもしろいのね。

そんなに信じないなら、いいもの見せてあげるわ」

そう言って先生が取り出したのは、4つ折りの紙。

角もあってない雑な折り方に、不器用さを感じた。

2人はそれを受け取って開く。





2人は、同時に目を見開いた。




そこには、下手クソな字で、紙いっぱいのおおきな文字。





“しん友え

ありがとう、ばか”





櫻野と昴は、顔を見合わせて笑った。

下手くそだけど、誰よりも、心がこもっていた。





「彼ね、“友”っていう字を教えてって、自分から言ってきたのよ」





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