しん友へ(回想)



「はい、よくできましたっ」

動けない詩の頭をぽんぽんとたたいて、レオは立ち上がる。

「はーい、皆さん今のきいてた?

詩くんこーんなに反省してるから、許してあげてねー?」

レオは教室中にいるみんなに声をかける。

「今の言わせる必要あった?」

鳴海は冷めた目で詩を見下ろす。

「いいじゃないすか、どーせこいつ性格わるいから謝んないだろうし。

先輩だから反省させろって言われてもめんどうだし。

むしろ俺ってばやさしーっ」

レオは楽しんでいるように言う。

そしてあっと思い出して、くるっと詩へ振り向く。

「詩、しばらくそこで力抜いてろ」

その言葉通り、詩はぐったりとする。

もう身動きはとれないらしく、抵抗もしなかった。

「回収されるまでねーっ」

そんな陽気な声とともに、レオと鳴海は教室を出て行く。





「お前趣味わるいな」

鳴海はそうつぶやくが、レオは何言ってんすかーと返す。

「俺らの貴重な昼休み奪っといて、大罪っしょ」

「やり返されてもしらね」

「その時は倍返しするまで...

まぁでも...面白いもんみれたしいっかー」

やっぱアリス制御しないのはきもちーっ

と、レオは伸びをして、初等部をあとにするのだった。






残された生徒たち。

鳴海のフェロモンが弱まり、やっと歩けるようになる。

そして、みんな顔を歪めた。

みんなが、一生懸命書いた手紙が、式神によってびりびりに引き裂かれていたのだ。

それは、櫻野や昴のも例外ではなかった。

小さい子や、女の子たちは、泣き出してしまう。

さすがに詩に絡んだ子たちも、ショックを受けていた。






ほどなくして、ぐったりした詩は教師によってどこかに連れていかれた。

きっと、彼に待ってるのは罰則だろう...

櫻野と昴は、呆然と見送った。







身体が...重くてだるい...

鳴海のフェロモンもあるが、レオのアリスに無理に抵抗しようとしたのも大きく体力を削った。

式神のアリスも、使いすぎた。

クソ...

ナルとレオ...

次会った時は...

そう思ったところで、意識は途絶えた。







どれくらい眠ったのだろう。

たぶん、そんなにだ...

ばちんっと体中を刺激が伝う。






目が覚め、一番に目に入ったのは...

胸糞わるい...世界一嫌いな男...

初等部校長、久遠寺____

寝覚めも神野の雷で、最悪だ。





未だに体中、力が入らなかった。

「感心しないな、詩」

冷めた目で見下ろす久遠寺。

「今年に入って何度目...

もう数えるのも面倒だ。

君が反骨精神を抱くのは構わないが、そろそろ無駄だと気づいたらどうだ。

こちらも毎回、子どもの駄々に付き合うほど暇じゃない。

...君がこうして日の目を浴びて学園生活が送れるのも、私のおかげなんだ。

少し、感謝がたりないんじゃないか」








感謝...?

感謝だと....誰が、お前なんかに...っ






詩は、精一杯の抵抗で、睨みつけることしかできなかった。

無力だ...

俺はまだ、何もできない...

悔しい...悔しい悔しい....っ



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