卒業
「「「詩先輩、卒業おめでとう!!!
ありがとうーーーーーっ!!!」」」
たくさんの生徒に見守られ、見送られ、詩はその正門をくぐった。
学園に来たばかりの俺は、こんな未来を想像できただろうか。
自分のアリスを呪い、恐れ、絶望した...
人を遠ざけ、傷つけた...
ひとりぼっちだったあの頃。
でも、今ではこんなにたくさんの仲間に、笑顔で卒業を祝ってもらっている。
最初のきっかけを作ってくれた先生、本当にありがとう___
先生、棗の母さん、蜜柑の母、柚香さん...
一緒に戦った学園のみんな...
蜜柑...
ありがとう、ありがとう____
俺は自分のアリス、式神のアリスを愛しているよ。
正門をくぐった先、そこは卒業式と同じような山場でもある。
今まで、会えなかった家族と再会を果たす場所だった。
みんな、涙を流し、その再会を喜び合う。
「大きくなったなあ」
「母さん、会いたかった」
「立派になったねえ」
「パパ!だいすき!」
そんな感動の抱擁の間をすり抜ける詩。
自分にはないもの。
今さら悲しくは思わない。
そんな時、向こうで手を振る姿を見つける。
人込みの中、そこだけ光って見えるような感覚だ。
すぐにそこへ向かった。
「##NAME1##!」
「詩!!」
2人は抱き合う。
「ごめん、待たせた」
「ううん、詩ってば人気者だから」
笑顔でいう##NAME1##の視線は、両手いっぱいの、後輩たちからのプレゼント。
「んなことねーよ」
そう言ってから、気づいた。
「あっ...」
##NAME1##は少しだけ恥ずかしそうに頷く。
「あらっあなたが詩くんねー?
もう##NAME1##にはもったいないくらいのイケメンじゃないのーっ
もう、うちの子よろしくね!」
ばしばしっと叩いてくるのは、##NAME1##の母親だった。
ちょっと、想像してたのと違う...
詩は圧倒されていた。
##NAME1##からは病弱ときいていたし、比較的おとなしめな##NAME1##からは想像できないくらい、明るくパワフルなお母さんだった。
「ちょっとお母さん、はじめましてなのにそんな...っ」
「いいじゃないの!!
あんたが手紙で言っていたよりずっとイケメンよ!!
娘にも久しぶりに会えて、彼氏にも会えるなんて....もう感動よ」
ぐいぐいとくる##NAME1##の母親。
##NAME1##が会わせたいとは言っていて、少し緊張していたけれど、安心した。
「東雲 詩っていいます!
よろしくおねがいします!」
詩は元気よく、あいさつした。
「こちらこそよっ
ほらっ貴方も!!
お父さん、##NAME1##の彼氏よ!!」
「ちょっとお母さん、声が大きいよ...」
##NAME1##は恥ずかしいのか顔が赤くなっている。
そうして、目の前に現れたのは、高身長で美形。
物静かそうな##NAME1##の父だった。
「にぎやかですまないね。
詩くん、いつでもうちに遊びに来るといいよ」
「え...いいんですか?」
驚いた顔をする詩。
「人が多い方がいい。
妻も、その方が楽しそうだから」
そう言った##NAME1##の父親のまなざしは、やさしく、##NAME1##の母へと向けられていた。
それがとても、素敵だと思った。
いい夫婦だと、思った。
##NAME1##がこんなにも温かい性格な理由が、分かった気がした。
「なんか、ごめんね」
「ううん!##NAME1##の母ちゃん、面白いな!」
##NAME1##は照れながらも、ありがとうと言った。
「あんなに元気なんだけどね、まだ病気がよくなったわけじゃないから...
私、しばらくは家に居ようと思う」
「そっか。
それがいいと思う!」
「詩も、遊びに来て。
待つのは得意だから、待ってる」
「おう!
嬉しい、そーゆうの。
はじめてだから!!」
詩はそう、いつものように笑った。
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