抱きしめて
昼間、あれだけ盛り上がっていた学園も夜になると静かになる。
今日は祭りの後の静けさというか、いつも以上に静かな気がした。
「あいかわらず広くて殺風景な部屋だね」
少し呆れて##NAME1##は言う。
詩は礼装のジャケットを適当なところに放る。
「まぁ、あんまり学園にいることもないしなあ。
こんな部屋大きくても実際意味ないし」
そう言って、はいっと、飲み物が入ったコップを##NAME1##にわたす。
ダンスで火照った身体にはちょうどいい冷たさだ。
##NAME1##の、グロスで艶めく小さな唇がコップに触れた。
その横顔が、またきれいだと思った。
そっとその華奢な背中を、後ろから抱きしめた。
「詩...?」
返事の代わりに、ちゅっというリップ音が聞こえ、首筋が熱を帯びた。
そのまま詩の吐息を耳元できいていたら、おかしくなってしまいそうだ。
詩の唇は耳元でとまる。
「ごめん...我慢できないんだけど」
低い声が、耳から伝い、全身の力を奪うかのようだった。
「我慢って...」
言うよりはやく、##NAME1##はベッドに押し倒されていた。
覆いかぶさるようにのしかかる詩。
ダンスよりも、距離が近い気がした。
そして、雰囲気もいつもと違う。
キスだって....
こんなに痺れるような、甘くて、壊れそうになるの....今までなかった。
制御が外れたかのように激しい詩。
男らしさがあふれ、詩が求めるものに必死にこたえるだけで精一杯だった。
少し、怖かった。
でも、拒絶はできない、もっと愛してほしいと思う私はおかしいのだろうか。
そんな気持ちが伝わったのだろうか。
ふっと、詩の唇が離れる。
「##NAME1##....もしかして....
初めて...?」
これからする行為...それを想像して、顔がさらに真っ赤になった。
恥ずかしくて、手で顔を覆う。
「うん...はじめて....」
ぱっと、その手が詩によってどけられる、やさしく掴まれた手首。
もう、逃げ場はない。
詩の瞳はずっと、こちらを見つめている。
「ごめん...
怖かった?」
詩のまっすぐな瞳に観念して、見つめ返す。
「すこし...だけ。
...初めてなんて、重いよね」
不安と緊張で泣きだしそうだった。
「何言ってんの」
詩はいつものように笑う。
それが、緊張をほぐした。
「うれしいに決まってんじゃん。
好きな女の一番になれて、うれしくない男なんていない」
詩はまたふと、柔らかい表情になる。
「...やさしくする。
約束」
ちゅっと、詩は##NAME1##のおでこにキスを落とした。
それでまた火照る頬。
「かわいいよ、##NAME1##....」
ミルクティー色の髪ごしのグレーの瞳。
この人を好きになってよかったと、思った。
初めて知った、痺れるような快感と、少しの痛み...
それ以上にたくさん感じた詩の愛。
詩の長い指が触れたところから、まるで魔法のように熱くなっていく。
詩のことしか考えられなくなって、頭の中が詩のことでいっぱいで...
詩に夢中で夢中で仕方なくなる。
このまま壊れちゃうんじゃないかって思うほど。
今日、またひとつ新しい詩を知れた。
距離が、近くなった。
泣きたくなるくらい愛しい人と、ひとつになれた悦び。
怖いとか、感じる余裕がないくらいに詩はたくさんたくさん愛してくれた。
全身全霊で、愛を伝えてくれた____
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