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共闘



「わしはね...君たちを殺したくはない。

ことを穏便に済ませたい...」

園部は、余裕の笑みを浮かべた。

嫌でも久遠寺を前にした時を思い出してしまう。





「わしは、君たちが心底、うらやましいよ。

アリスに生まれただけじゃなく、中でも稀有なアリスをその身に宿しているのだから....

わしはアリスの名家に生まれたが、父親が非アリスの母親と結婚したため、アリスを授からなかった。

それがあの時代、何を意味するか。

親戚中からの冷ややかな目線。

アリスをもたないだけで、落ちこぼれと言われた。

惨めだったよ...とても。

母親を恨んだ。

アリスとして生まれた兄に、嫉妬した。

まあ、そんな生い立ちなら、アリスを呪うのが普通じゃろうな。

しかし、わしが受けた仕打ちの数々が、それ以上にわしをアリスに執着させた」






虐げられてきたその屈辱が、園部を今の位置に押し上げたということか...

歪んでいるな...

翔は静かにそう思った。






「わしはある時気づいた。

アリスをもっていないなら、アリスをもつ人間を手元におけばいい。

そうすれば無敵だ。

わしにアリスはなくとも、実質、アリスを何百ももっているのと同じ、と」

園部は自信満々に言う。

その目は爛爛としていた。






「お前たちが一生、わしのもとに仕えるのであれば、命は保障してやろう。

わるい話ではない。

君たちは特別だ。

希少なアリスでもある。

他のアリスよりも優遇しよう。

金ならある、望みだって叶えよう。

わしに、忠誠心を示す限りな」

この自信...

裏切られないような仕組み...読心のアリスがいるのだろう...

ここで下手な小細工、嘘は、通用しない。

翔は考えを巡らせる。

しかし、隣の詩にはそんなこと、関係なかった。






「俺はお前が言ってることがわかんねえし気に食わねえ!!

アリスがあるからとか、ないからとか関係ねえ。

人をそうやって物みたいに扱うお前が、自分の幸せしか考えられないようなお前みたいなやつの言うことなんてきかねえよ!!」




詩...

ああ、そういうやつだったと思いなおす。

こいつは誰が相手とか、どんな状況とか関係なく、まっすぐだ。

翔はふと笑った。






「交渉...決裂のようだな」

園部の瞳が暗く沈んだ。

そして低く唸るような声。

「構わぬ、撃て」




その合図とともに、容赦なく降り注ぐ弾丸の雨。

眩しかった。

言葉通り、ハチの巣...





かと思われたが、目を見開き青ざめた顔をしていたのは、園部だった。






「い、一体、いつから....っ」






園部の目の前には、紅い血は一滴も流れず、ただ、無数の式神が舞っていた。

園部は見た。

弾丸が当たったと同時に、2人の姿が式神となり分裂したことを...






「ばかなっ」





園部ははっとする。

「地下じゃ!

地下を調べろ!!」

その言葉がすでに遅いことは、本棚裏の隠し扉が開いていたことで悟る。






「ずっと、騙されていた...?

この、自分が...?」






園部の顔は屈辱に歪む。






「おのれ....っ

しかし籠の中の鳥には変わりない。

絶対に、逃がさんっ!!」





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