このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

共闘



「やっぱ、東京より寒いな...」

黒いフードのついた防寒具を、一層肌に密着させる詩。

吐きだす息も白かった。






目立たぬように注意をはらいながら、案内役について進む詩と翔。

うっそうと茂る森の中。

霧が、深くなってきた。






「あそこです。

あれが、園部の別荘です」

いきなり開けた視界。

そこは湖畔で、対岸に大きな建物のようなものがみえた。

詩はよく見えるようにと、フードを外す。

「あれが...」

同じようにした翔もそう声をもらす。

「おもったよりでっけえな」

詩の言葉に翔は頷く。

今にも雨が降り出しそうな天気のせいもあり、洋風の造りのその館は、不気味な雰囲気だった。

「私の案内は、ここまでです。

幸運を祈ります」

案内役の言葉に頷き、お礼を言う。

詩と翔の2人の力、奇襲をかけるという点において、少数精鋭でいくのが妥当というのが最終判断だった。

時間をかけて練り、準備をした綿密な作戦でないぶん、余計な兵力は統率を乱す。

これが今の状況的にベストだった。






「あそこから回った方よさそうだな」

翔の言葉に頷く詩。

「こっからは結界はるから」

そう言われ、気を引き締める詩。

思えば、初めてこんな大きな任務に翔とあたる。

東雲と南雲の前哨戦だ。

そして、失敗は許されない。

アリス村で培ったものを、発揮するとき。

全神経を集中させた。

もう、自分のアリスにのまれるような自分じゃない。

厳しい訓練にだって耐えたし、隣には翔がいる。

ひとりじゃない。






式神から情報を得る詩を先頭に、音もなく走る2人。

その集中力はまさに、狩りをする獣のようだった。







園部の別荘に近づいた2人。

詩の式神の偵察を待ちながら、息をひそめる。

「思ったより、警備はうすいな....」

翔がいう。

正面には数人の護衛がいるが、なんだかやる気のなさそうな雰囲気だ。

「まぁ、今日俺たちが奇襲かけるなんて誰も思ってないだろうからな」

翔はそうだな、と頷くも何か少し、不安を感じていた。

「裏口..食糧庫か...

そこからなら入れそうだ」

詩は偵察を終わらせていう。

「了解、裏手にまわろう」





.
1/6ページ
スキ