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掴んだもの



そうと決まれば、行動は早いにこしたことはない。

権力も何もない自分たちにできることは、相手に悟られる前に行動することが最善といえた。

準備すらさせない。

余計な根回しがされる前に動く。




「今回のこと、君たちがそう言うと思って、志貴さんには話を通してある」

さっすがナル!と詩はいうも、鳴海の表情は険しい。

「志貴さんは全責任を負うと言ってくれている。

とは言っても、そんな責任を負わせるようなヘマ、君たちには許されないということは....」

詩はいつになく真剣な目つきだった。

「わかってる。

志貴さんに迷惑はかけない。

誰にも...」

自分たちが失敗したら、この学園の中等部の校長に迷惑がかかり、それはすなわちせっかく変わりつつある学園をまた振り出しに戻すことにつながるのだ。





「何か、他に俺たちが有利になる材料はないのか」

翔がいうと、捜査官は頷く。

「どれだけ君たちの手助けになるかはわからないが...

園部は敵も多い。

そこで、今回は影ながら園部を蹴落としたいと思っている人を利用する。

正攻法ではないが、そのバックアップで少しでも君たちは動きやすくなると思う。

こちらとしても、君たちの手を借りられるのは心強い。

できる限りのサポートはするよ」

なるほど、と翔は頷いた。

何も詩がいうような無鉄砲な作戦ではないということか。

それだけで少し安心した。

隣ですでに闘志を燃やしている彼は、どこまで考えているのだろう...






聞かなくてもわかることだが、一応きいてみる。

「ところで、学園祭のことはいいの?

詩あんなにはりきってたのに」

そう、忘れかけていたが、今は学園祭真っただ中。

詩にとって、学園生活最後になるものだった。

今まで任務で参加できないことが多かった分、詩にとっては特別なもののはず...

でも詩は、まっすぐにいう。

「んなの、心配しなくても大丈夫!

4日もあるんだ。

ちゃんと最終日には戻ってくるよ。

学園生活の楽しみだって、奪われてたまるか!」

言うと思った...

ふっと笑うと、鳴海も同じような表情をしていた。






もう、奪われるだけの生活じゃない。

暗い地の底に頭をこすりつけられていた時代は終わったんだ。

自分の足で、意思で、歩んでいく。

仲間と共に...

そんな決意を胸にした詩はより一層強く見えた。






そして翔は先ほどの占いの館の、占いを思い出す。




「海を越ゆ

幼子の胸に

燃ゆる石

無数に光れど

道は難あり」




海を超ゆ...

北海道のことか...?

でも、“幼子の胸”が引っかかる...

これは、何を暗示しているのだろうか。

道は難あり...

その言葉が、より一層自分の気を引き締めた。






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