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掴んだもの



「ちょっと本部まで距離あるよな。

どうする、走るか?」





占いの館から出てきた詩と翔。

翔は伸びをして走る準備をしていた。

しかし、隣の詩はにやりと悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

嫌な予感がした。





「んなことよりもっといい手がある!」





そう言って、びしっと詩が指さした方向には。

詩が気に入ったおかげで何度も乗った、サイコキネシスのアトラクション。

遊園地にあるような、上下に浮遊しながらぐるぐる周回する乗り物だった。

それが他と違うのが動力が念力ということと、紙ヒコーキ型ということ。





「南雲のじいちゃんから俺のじじいの話聞いたときから、ちょっとやってみたかったんだよね...

今日はおかげでイメージもできたし」

「まさか...」

言った時には遅かった。

詩の周りからどこからともなく、無数の式神があらわれる。

それはどんどん増えていき、白い塊となり、それがひとつの形を成していく。

ここは潜在系エリアのど真ん中。

派手な能力故、周りの目も集まる。





「なになに?ゲリラパフォーマンス?」

「え、そんなの企画してたっけ」

「いや、待てよ、あれ東雲詩じゃん?」

「何が始まるのー?」






「こんなに騒ぎにしたら秀に怒られそうだな...」

とはいうものの、詩の目は少年のように輝いていた。

そしてぴょんっと飛び乗る。

そして翔にも乗るように、手を差し出す。

翔はため息をつきながらその手を握るもなかなか乗り込まない。

「ねぇ、これ初めてやるんだよね?

ほんとに飛ぶの?

俺まだ死にたくないんだけど...」

形のできはまずまずだが、何メートルも上空を飛ぶのには信頼に欠けた。

「何言ってんだよ!

お前風使いだろ?

これくらい持ち上げろよ」

この言葉に呆れないわけがない。

でも、詩は至極当然のように言っている。

本気でそのつもりだったようだ。

このバカの突拍子のなさに俺は、どこまでついていけるんだろう...

そう思いながらも、内心楽しんでしまっている自分がいた。

ふっと笑ってそのまま飛び乗る。

その瞬間、詩のつくった式神の巨大紙ヒコーキは空へ舞い上がった。






「ひゃっほーーーーーう!!!」





詩の歓声が上がったと思うと、もうその姿ははるか上空。

下から、どよめきが聞こえた。

そのまま、目的地へまっすぐと、詩は向かった。





「ほんとお前、いつも無茶が過ぎんだよ」

そんな声も聞こえてないんだろうなと思ったが返ってくる。

「でもお前、いつも付き合ってくれんじゃん」

詩は、そう嬉しそうに言う。

「ほんと、ばか....」

翔はそう言って笑った。









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