何が視える
「海を越ゆ
幼子の胸に
燃ゆる石
無数に光れど
道は難あり」
......
「ったく相変わらずわっかんねぇな!」
「うん、さっきよりわからない...」
そんな2人に挟まれ委縮する占い師。
「そ、そんなこと言わないでくださいよう」
と、そんな時だった。
バタバタバタっ
とこちらに向かってくる足音。
それと共に入ってきたのは、先ほど別れたばかり。
その慌てた姿は珍しい、セリーナ先生だった。
「詩くんはいる?!」
そう言って、視線の先に詩を見つけ、安堵する。
「よかった、まだいた!
鳴海先生から緊急の連絡よ」
そう言って端末を渡される。
展開についていけないが、とりあえず受け取る。
「もしもし?ナル?
なんだよ緊急のれんら...」
「詩!!
君のアリスストーンが見つかったよ!!」
.....
ええええええええええ?!?!
何この急展開!!!
近くで音漏れを拾っていた翔も驚かずにはいられない。
「どっどういうことだよナルっ!!」
食い気味にきく詩。
冷静でいられるはずがなかった。
「急かしてわるい、正確には、君のアリスストーンと思われるものが見つかったんだ。
この間、アリス製品の違法取引の摘発があったらしくて、
その押収物の中に、藍色のアリスストーンがあったんだ。
とにかく、くわしいことはこっちに来てから話すから、君は至急本部に来て。
いいね!」
ブツっと通信が切れる。
詩は今起こったことに呆然とする。
そして、占いの彼に向き直る。
「探し物、見つかったって」
え、ええええええええ?!?!
驚愕の表情を浮かべる彼。
「おい、お前がそんなに驚くのおかしいだろ」
翔は比較的冷静のようだ。
「だだだだって、こんなに早く見つかるなんて...」
「てか、そうとわかれば行くぞ翔!」
詩はもう、その気満々。
「うん、言うと思った」
翔は頷く。
「あああ!待って!
最後にひとつだけ!!」
呼び止める彼に、急停止の詩。
なんだなんだ、と彼の言葉を待つ。
一呼吸おいて、彼は話す。
「僕は、占いをするとき、思い浮かべるものを聞かないようにしているんです。
それを聞いてしまうと、とたんに視えなくなってしまうから。
占い師は、自分のことを占えない人がほとんどなんです。
自分が探してしまうと、自分が想像してしまうと、何故だかうまくいかなくって。
だから、僕の元へ来る人たちの思いに委ねるしかなくて...
おまけにアリスを使っている時の記憶はないから、自分のアリスがどう役に立っているのか実感がわかなかった。
だけど今日は違った。
初めて、こんなにも僕の力を必要としてくれる人がいるって、実感できた....
だから、ありがとうございます!」
彼の顔は明るかった。
「探し物、全部見つかるといいですね!!」
その言葉に、詩はにっと笑う。
「おう!!
全部見つける!!自分の手で!!
お前の占いがめちゃくちゃ当たるって証明してやるよ!
名前は?」
「か、幹太です!!」
詩は笑顔でいう。
「ありがとな!
じゃあ、またな!
タンカ!!!」
詩はそう言って、走っていってしまった....
「うう、僕、カンタなのに...
みんな間違うからもういいけどっ
でも、憧れの詩先輩とせっかく話せたのに....っ」
複雑な感情になりながらも、幹太は詩の後ろ姿を最後まで見送った。
「はーいタンカくーん、仕事仕事っ____」
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