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何が視える



「お、おい...

短歌ってなんだよ...」

ひそひそ声で隣に座る詩は話しかける。

「短歌ってあれだろ...

五七五七七でよむ...たぶん...」

翔もまた、想像がついていなかった。

しかしロクな説明もなく、目の前の生徒は始める。

占い師の前には、何か色紙のようなものに、筆と墨が用意されていた。

そして、その筆を手に取る。

一瞬だけ、空気が変わったのを詩も察知したらしい。





「では、お2人の“探し物”を頭に強く思い浮かべてください。

本来は1人ずつなのですが、今回はお2人とも同じものをお探しのようなので、特別に。

強く、強く思い浮かべてください。

はっきりすればするほど、思いが強ければ強いほど、それは鮮明に視えてきます。

...はじめましょう」





今井兄妹...

大切な戦友...

その、大事な記憶...

ここに生きる意味...

もう一度吹き込まれた、式神の息吹...





翔と、巡り会えた奇跡...





目をつむり、頭に思い浮かべた時、ふと思い出す。




自分に足りなかったもの...

アリス村で見つけた、アリスを制御するということ。

アリスを理解し、見合った器になるためにした鍛錬の日々。

ああ、あの時たしか、南雲のじいちゃんは大事なことを言っていた...気がする...

いつものように修行でくたくただった詩。

早く、早くその翔の背中に追いつきたくて必死だったあの時...






ー詩、強くなることに近道などない。

焦っても、空回りするだけじゃ。

今一度、自分に足りないものを見極めなさい。

目的ばかりにとらわれるな。

しかるべき手順をふんで、しかるべき時を待て。

目の前にある壁をひとつずつ乗り越えた先に、おのずと光は見えてくる...

自分を犠牲にすることが正しいことではないと、お前はその学園とやらで学んだのだろう...?






...そうだ、詩。

お前は今、何を思い浮かべてる?

“今井兄妹”か?

それはわかっている。

でも、今は違う。

まずは、お前自身が失くしたもの、自分の一部であるものを...

隣には俺がいるんだ。

南雲家の、この俺が...

お前が万全じゃないのに、俺が完璧に力を使えるわけがない。

まずはお前自身を取り戻して...

それから俺が、完璧にお前の強さのすべてを引き出してやる。

話は、それからだ_____






俺たちが今、探しているもの...

強くなるために必要なもの...




それは....







“式神のアリスストーン”....!!!





2人の思考は、ぴたりと重なる。

占いのアリスも驚く。

これほどまでに強い思い。

初めてだった。

そして、それが強い力となり、自分のアリスと共鳴を起こす。

その激しさに、めまいがしそうだった。

でも...



でも....




視える...!!




視える...!!





それは、近くに...っ





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