何が視える
詩と、こういうイベントごとに一緒に行くのはおすすめしない。
翔の心中は今それだけだった。
本当に忙しかったのかもしれないが、櫻野が一緒にまわらなかった気持ちがわかる。
朝からノンストップで連れまわされっぱなし。
よくもまあこんなに純粋にはしゃげるなあ、と思うのだった。
「翔!!
みろよあれ!!
すっげぇなぁーーー!!」
「サイコキネシスのアトラクションだって!!」
「なぁもう一回のろうよーっ」
「あっなんだあれ!!
マジックショーだって!!」
「次あれ行こう!!」
「待ってこれもいいなあ!!」
あっちへこっちへと振り回され、よくわからない被り物まで被らされ、同じアトラクションに5回は乗った。
さらに人気者の詩は、よく人だかりができる。
アトラクションより人が集まるんじゃないかと思うほど。
詩は嫌な顔ひとつせず、ひとつひとつ答えるのだった。
「わーやっぱ混んでんな、櫻野くんが言ってた“占いの館”」
最後にまわってきた、占いの館は大行列だった。
「なぁ、4日間あるんだし、今日はやめとかね?
それか昼飯のあとに....って」
隣にもう詩の姿はなかった。
ったく、とため息をついて小さくなりつつある後ろ姿を追うのだった。
「翔もなんか占ってもらおーよ!
秀も占いの館行けって言ってたし!!」
「俺はいいよ、別に。
それたぶん、行けとまでは言ってなかったよ...」
「なんだよ、冷たい男だなあっ」
「だってこんな大行列みたらちょっと....」
先が見えない列に仕方なく並んでみたものの、某テーマパークの待ち時間並みだった。
「整理券とかないの?
それこそお前くらい友だちいんならツテとかさ」
「おおなるほどっ
その手があったか」
「今まで考えつかなかったのかよ...」
呆れてる間にも、詩は何かに気づいた様子。
「セリーナ先生~~っ!!」
見つけた人のもとへ一目散に駆けてゆく。
今日でこの光景、何度見たことか。
そして何度追いかけたことか。
これで絶対に最後にしようと固く心に決めた。
「セリーナ先生!
ひさしぶり!!」
あら、詩くん。
そう言ったのは物腰やわらかな女性。
どこか異国を思わせる顔立ちと雰囲気だ。
「翔、こちらは潜在系のセリーナ先生。
美人だろ?」
「あ、ああ。
うん...」
直球な紹介に、言葉がつっかえてしまう。
でも、初めて会った感じがしないのは、気のせいだろうか...
自分自身、ずっとアリス村にいたのだから気のせいに違いはないのだけれど。
「山田 瀬里奈。
水晶玉を使った、千里眼のアリスよ」
「千里眼...」
翔はつぶやく。
「おいおい、セリーナ先生美人過ぎるのはわかるけどお前もあいさつくらいしとけよーっ」
詩に言われ、そうだったと向き直る。
「南雲 翔です」
セリーナ先生はにっこりと微笑む。
「南雲...なつかしい名前ね」
え....?
詩と翔はなんのことかと、目を合わせた。
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