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何が視える



外国人に丁寧に説明し終え、見送ってから秀、と呼ばれた生徒はこちらに向き直る。

「うん、詩にしては時間通り。

珍しいね」

さわやかというか、好青年というか、今のところ非の打ちどころがないというか...

完璧な、オーラ。

ああ、この人か。

一瞬で納得した。





「あったりまえだろ!

秀、相変わらず忙しそうだから全然会えなくて。

今日逃したらまた会えないと思ったから必死だよ。

こいつも紹介したかったのに」

そう言われ、櫻野は翔に目を向ける。

「僕の都合に合わせてもらっちゃってわるいね。

櫻野秀一です」

やはり、あの、学園一の秀才でアリスを3つももつ、学園総代表をも務めたすごい人。

翔だって、興味はあった。

「南雲、翔。

俺も、会ってみたかったから...

逆に、試験勉強も佳境なのに、なんかすいません」

「そうだ秀!

アリス国際...国際アリス?なんちゃらってのはどうなんだ?

受かったのか?!」

ほんと、デリカシーのないやつだな、とあきれる。

でも櫻野はそんな詩に慣れているらしい。

「国際アリス機関ね。

まだだよ、これからだ。

でも最終選考には残れた」

えっと、翔は目を見開く。

学園の歴史の中でも稀にみる秀才とはきいていたが、ここまでなんて...

櫻野が目指しているその場所の倍率なんて、夢のまた夢のようなもの。

その、最終選考に残るなんて....

「うわぁ!!すげえじゃん秀!!

すげーよ!!」

そう飛んで跳ねまわっている詩に、一体そのすごさはどれくらいわかっているのか...

「じゃあ、今こんなことしてる場合じゃ...

大事な時期なんじゃ」

はっとして、翔はいう。

なかなか会えないのも当たり前だ。

「そのことは気にしないで。

午後からはまた試験の準備にとりかかるよ。

今は息抜き。

僕も、今年の潜在系...学園生活最後の潜在系の出し物を見ておきたかったから」

「えーじゃあ午後にはまた勉強かよーよくやるよなあ。

俺には無理だー」

ほんとにこいつは...

「試験は勉強だけじゃないんだけどね。

でも、詩だってアリス村でいろいろがんばったんじゃない?」

すっと櫻野が細めた目。

一瞬の動作だったけど、翔には目についた。

何か、詩に視えたのだろうか...

「おう!

こいつのおかげで強くなったんだ!!

秀にだって負けないよ!!」

詩は何の前触れもなく翔の肩に手を回し引き寄せる。

「ちょっと詩...っ」

その様子に、頷く櫻野。

「そうみたいだね。

詩のこと、ありがとう。

こんなやつで大変だと思うけど、よろしく」

「こんなやつって秀ーっ!!」

詩は納得いってないようだ。

「まぁでも、秀が勉強教えてくれたからアリス村に行けたんだ、感謝してる!!

最高の相棒みつけたし!!」

恥ずかしげもなく詩は言ってのけるからすごい。

うん、と櫻野は頷く。

「最終選考は海外なんだろ!

俺たちがボディーガードやってやるよ!!」

自信満々の詩。

また思いつきで勝手なことを、と翔はため息をつく。

「いや、遠慮しておくよ」

試験前は集中したいし、と櫻野は涼し気に即答する。

ごもっともだと翔は思う。

こんなやつといたら、一切集中できない。

「でも、ありがとう詩。

気持ちはうれしいよ。

僕は僕でやるから大丈夫。

準備にぬかりはない。

詩は詩のやるべきこと、たくさんあるでしょ」

あっそうだったと、自分のアリスストーンについて思い出す詩。

忘れてたのかよ、と翔はつぶやく。

「ま、秀なら俺らいなくても大丈夫だよな」

2人は目を合わせて頷く。

この瞬間だけは、詩と櫻野にしかわからない空気が流れた。

お互いの目標は同じ。

今井 昴___

大切な友だちを、取り戻すために...っ





「じゃ、そろそろ僕は行くよ」

「えっ午後まではいるんじゃねえの?」

もう行くの?と詩。

「申し訳ないけど、僕もいろいろ顔を出さなきゃいけない場所があってね。

南雲くんも、

2人とも、潜在系エリア楽しんでいって」

にこやかに笑う彼。

なーんだそうなのかーと、少しだけ残念そうな詩。

だけど、久しぶりに友だちと話せたことは満足らしかった。

「じゃあなーっ」

と元気に見送るのだった。






櫻野は元気な詩の声にこたえてから歩き出す。

しかし何を思ったか、ぴたっと足をとめ振り向いた。

「詩、今年の潜在エリア...

占いの館に力入れてるらしいよ。

行ってみたら?」

ん?と詩は首をかしげるも、元気に「わかったー」と叫び、テレポートするまで手を振るのだった。





最後の櫻野の言葉、翔は少し気になった。

彼のアリスは確か、テレポート、テレパシー...そして、直感。

何か、感じたのだろうか...



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