戦況/久しぶりの影
「みんな察しはついていると思うけど
ここで.....初等部校長側の奇襲があった」
詩の言葉はわかっていたけれども、みんなの表情は曇る。
「式神使って、お前らが学園にいないってことはわかってた。
その後、秀のアリス石で秀とコンタクトをとることができたんだ。
それで、お前らが蜜柑の今後を決めるために過去に行ったってことを知った。
もっと早くコンタクトをとれればよかったんだけど、
俺もそのときは追われるのがピークだったし、
まだ秀のアリスは使いこなせないしで.....」
詩は、今の状況を話し始めた。
「ここの奇襲は式神を通してわかった。
俺は高等部に行こうと思ったけど、秀にテレパシーでとめられた。
〝蜜柑たちが戻ってきたら、状況を伝えてほしい〟って。
だから、今の状況をありのままに伝える」
詩は、真剣な表情になった。
こんな状況なのに物怖じしない詩は、やはり経験の差を感じる。
「今風紀隊に捕まっているのは、
蛍ちゃん、あんたの兄の.......
昴だ.........」
その言葉に皆、驚く。
蛍が一番、信じられないという表情をしていた。
でも詩だって、仲間の一大事に駆けつけて手を貸せなかったのを悔しく思っているだろう......
「早くここを出ないと、俺たちも危ない......」
詩は言う。
「野田先生、過去にもう一度いくことは....」
と、殿が言ってみんなの視線がのだっちに向けられる。
しかしそののだっちの腕をみて、殿の提案は無理だとわかった。
制御ブレスへの妨害念でのだっちの手は痛々しく腫れていたのだ。
「....とにかく、
ここでだべってても危険なだけだ」
棗が言う。
「状況から考えて高校長達もここにいる全員
学園の反逆者扱いは決定的だ
捕まるのは時間の問題....
そうだろ詩」
「ああ....そうだな」
「だったらその前に、
安積柚香を見つけ出して
蜜柑と一緒に外へ逃がす」
「そんな....今それどころじゃ...」
「わかんねーのか
お前らさえ捕まらなければ
過去の奴らの夢も
この先の俺らの希望も
それだけで続いていくんだよ
お前らのアリスが初校長に渡らないことが
どれだけ大事か見てきたんじゃねーのか
言ったろ
守るって
何があっても......
どうなっても......」
「棗の言うとおりだ
これ以上ここで話し合っても仕方ない
今は一刻も早く柚香さんを探し出すこと
そしてこの学園から2人を脱出させる
今は全力でそれに向かってみんなで動くときだ」
詩の言葉にみな、賛同した。
「あんたの負けよ、蜜柑
ほら、はらをくくって!」
蛍も背中を押す。
「大丈夫
我々は強いチームです」
のだっちは力強く言った。
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