戦況/久しぶりの影
「ちょっとー?
そこのお2人さーん?
もういんじゃないっすかー?
つか詩、謝るなら俺たちにも謝りやがれっ!」
―ドカッ
殿が詩に蹴りを入れた。
「いったーっ
蹴るこたないだろ、殿!」
詩はしりもちつきながら殿をにらむ。
しかしその目もすぐゆるむ。
殿が、安堵したような、それでいてなんだか嬉しそうな、微妙な表情をしていたから。
「悪かったな.....みんなに心配かけて.....
ごめん....」
詩は、みんなに向き直り言った。
今思えば、なんてむちゃくちゃなことをしたのだろうと、少しは反省をしている。
そんな詩をわかったのか、殿は言う。
「もういいよ。
無事なのがわかってほんとよかった。
ここにいるみんな、そう思ってる。
それに、やっぱり学園には詩がいないとな。
......おかえり、詩」
「...おう」
見渡すと、みんな殿の言葉に頷いていた。
そしてその中に翼の姿を見つける。
「翼ぁ!
おまえ元気そうじゃん?
よかったよかった」
詩は翼の頭をがしがしと乱暴になでつける。
「いった
強いよ詩ー」
そう言いながらも、翼はいつものように笑っていた。
「詩先輩...っ」
蜜柑が駆け寄ってきた。
「おお。
蜜柑、久しぶりだな」
「....詩先輩、そのケガっ」
蜜柑は近くにきて気づいたのか、その痛々しい傷口に目を向けていた。
「ああ。
こんなのたいしたことねーって。
それに、櫻野のアリスストーンのおかげでだいぶ敵は巻けたよ。
まだ使い慣れないけどな...」
「詩先輩.....もう、平気じゃないのに平気なふりするのはやめて....」
蜜柑は泣きそうになりながら言った。
詩は少し驚いた顔をする。
だけど納得したように、
「そっか。
俺の過去も......見てきたんだな」
みんな、静かに頷く。
詩はぎこちなく笑った。
「詩.....
みんなもう、詩がどんな思いで、これまでこの学園で過ごしてきたのかわかったつもりよ。
だからもう、1人で運命を決めてそれで自分を縛り付けるのはやめて。
詩は、強いよ。
だからこそ、もっとみんなを頼ってほしい。
信じてほしい。
詩がどんな思いで初校長のそばにいたかと思うと、胸が張り裂けそうでならない。
学園のためといえど、こんな姿はきっと〝行平先生〟は望んでなかったはず。
みんなの家族だから、みんなの居場所だから、
みんなで守っていこ。
一人の力じゃ倒せない敵を、今こそ一丸となって倒すとき。
やっと、詩と同じラインにたてたよ」
##NAME1##の言葉に、詩は改めて仲間の存在を噛み締める。
「もう、巻き込む巻き込まないの話じゃないことはわかってる。
こんなにみんなが腹くくってるのみて、もうひとりで戦おうなんて思わないよ。
ありがとう、みんな。
力を合わせて、自分たちの未来を切り拓こう」
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