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戦況/久しぶりの影



「―よーちゃん逃げて」

「捕まればよーちゃんはもう....っ」

「もう二度と普通の生活は....っ」








「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ.....」

―逃げなきゃ!

あのことを、あのことをしらせなきゃ!

「いたぞ!」

「....っ」

―見つかった....!

そう思ったときにはすでに遅く、体を抑えられて身動きがとれなくなっていた。

もう、体力なんか残っていなかった。

諦めかけた、そのとき.......






―シャッ






見慣れたそれが横切ったかと思うと、自分を取り押さえていた風紀隊とその他数人の動きがとまった。

―服従の〝式神〟.....

「よーいち、大丈夫か?」

わしゃわしゃっと頭をなでられる。

今の時期は任務でいないはずなのに.....

と思いながらも

「....にーちゃ....うたにーちゃん...っ」

と、抱きついた。

「よしよし、よく頑張ったな」

詩はしゃがんで陽一と目線を合わせ、いつものように笑顔を向けた。

その笑顔は何だか懐かしくて、ちっとも変わってなくて、小さいながらに陽一は安心していた。

その顔も不安げな顔に変わる。

「にーちゃん、けが....」

陽一は詩の腕を指差す。

そこからは今も血が流れ出ていて痛々しかった。

「ああ、これ?

こんくらい大丈夫だ。

見た目だけだ、心配すんな

それよりお前もケガしてるじゃねーか」

今度は詩が陽一を心配する。

顔の切り傷から流れる血を拭ってやる。

その瞬間、詩は何かに気づいたように立ち上がり高等部の方を見つめた。






「....にーちゃん?」

「..........みんな、帰ってきたんだな」

詩はひとり言のように呟いた。

「わりー、陽一。

もう1人で行けるな?

花姫殿に向かうとこだったんだろ?

こっから先に敵の気配はないから大丈夫だ」

「......にーちゃんは?」

「俺は、蜜柑たちのとこへ行く。

どっちにしろ俺は花姫殿に行っちゃいけない身だからな。

きっとお前達危力系の仲間をこれ以上、巻き込んだりしない。

......陽一、こんな小さいのにこんな目に合わせてごめんな」

詩は悲しげに言った。

陽一はそんなことない、と首を振る。

そして、去りかける詩に

「にーちゃん!」

と呼びかけてとめた。






にーちゃんにも、知らせなきゃ

あのことを.........






「....っ」






詩は陽一の話を聞き、驚きを隠せなかった。

「....そうか。

ありがとな、陽一

とりあえず俺は蜜柑たちのもとへ向かうから。

今聞いたことは、信じられないけど......

信じたくないけど......」

詩は俯くが、ぱっと顔をあげ

「陽一、また無事な姿で会おう

お互い無事で.....」

最後にまた、詩は陽一の頭に手をぽんとのせ、高等部のほうへ駆けていった。

陽一もまた、花姫殿へと駆け出した。






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