行方不明/嵐の前触れ
「....泣くな」
棗が言った。
2人は抱きしめあっていた。
お互いの傷を埋めるように.....
「...ウチが泣いてんのとちゃう、あんたや」
「は...?」
ウチより....
誰よりボロボロなくせして、
それでも棗は泣けへんから....
だからここへ来たんや
あんたはそういう奴やから.....
「ウチが泣いたってるんや....」
棗は、ポケットの中の藍色のアリスストーンを握り締めた。
―もしあの時、あの任務のとき、詩も一緒にいたら、あいつならきっと.....
きっと、翼を救っていただろう......
そんな詩も、今はこの学園にいない。
こんなにいない日が続くということはきっと、長期任務。
詩がいないあいだにこんなこと.....
悔しかった.....
あいつがこんなこと知ったら、きっと自分を責める。
その前に、なんとしても見つけ出さなければ.....
「あいつは必ずみつける
お前のことも........」
そう、何か言いかけて棗はまた去っていった。
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