憎めない奴(殿内side)
「何だよ、それ....」
詩が操っている奇妙な白い紙を指差す。
よくみるとそれは、人型で....
「ああ....
これが俺のアリス。
式神っていうんだ」
ひょいっと飛んできたそれは、俺の周りを歩き回った。
「さっきは、これをこうしてっ」
詩はもう1つそれを出す。
指先ではさんだ紙は、ぴんっと背筋を伸ばしたように真っ直ぐになった。
「紙って意外ときれるだろ?
ほら、プリントとかで指切ったことない?」
「ああ」
思い当たり、納得する。
「枝から葉を切り離してじんじん直撃させたってわけ」
詩は得意げに言った。
それがなんだかおかしくて、笑ってしまった。
「あ、笑った!」
詩はそう言って嬉しそうに笑った。
「うるせーよ」
そうは言ったものの、具体的な理由はわからないが、この瞬間、詩に対する印象が変わったのは確かだ。
「お前のアリス、いいアリスじゃん。
俺らうまくやっていけそうじゃん?」
詩は冗談っぽく言ったが、俺はそれがなんだか嬉しくて、
「かもな」
と、小さく答えていた。
詩はそれに満足そうに頷く。
そして、
キーンコーンカーンコーン.......
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「よっし!
じゃあ約束どーり、特力いくぞ!
今度こそ!」
詩はニカっと笑った。
「ああ」
素直に返事した。
気に食わなかったその存在は、いつのまにか、憎めない奴....に変わっていた。
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