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憎めない奴(殿内side)



「1人は東雲詩かぁ?!

貴様こんなとこで何やっとる!」






―バリバリバリッ






足元に小さな雷が落ち、ぎょっとして詩を見れば、

「てめぇ殿内、俺を巻き込むなよ!」

と、そんな文句が聞こえる。

「は?サボってたのは一緒だろ」

と返せば、

「ばか、こーゆうのは見つからないようにやんの」

とかえって来て、

「じんじんもしつこいなーっ」

と、追いかけてくる教師の呼び名を口にした。

「ここ高等部なのに何で初等部のあいつが....」

詩は何やら悪態をつき、「仕方ねぇ」と一言言って未だ追ってくる教師を振り向きざまに確認した。

そして、ぶわっと何かを放つかのように右手を広げた。

何か白いものが見えた気がして、後ろをふり向いてぎょっとした。

なぜだか、それを出したと思われる本人も驚いた顔をしていた。

何か白い大群が高速スピードでそこらを飛び回り、ちょうど追ってくる教師が真下を通過したときに、今まで不規則に動いていた〝白いもの〟が同時に動いた。

その途端、バサバサバサーーーーーっと、

教師の頭上に、大量の葉が被さった。

教師のスピードが落ち、自由を奪われ、なおかつ視界を遮られたため、その隙に俺達は逃げることができた。

「へっざまーみろーーーーっっ」

詩は捨て台詞をはくことを忘れずに。








「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」」

2人で荒い息をし、安全な場所へ座り込む。

「つーかお前、アリス使うなら使うって言えよ。

びっくりしただろ」

最初に口を開いたのは詩だった。

「は?何言ってんだよ。

使ったのはお前だろ?

何だあれ?」

あの白い大群.....

「俺は使ったよ。

でもお前も使った!」

びしっと指を俺に向ける。

「意味わかんねー。

俺のアリスなんか増幅とかゆうのだろ?

俺1人で使って...」

「それだよ!」

詩はじれったそうに言う。

「あんなに大量なアリス、使うつもりなかったし。

ま、じんじんの面白いとこみれたからいいけどー」

詩は思い出したのか笑いだす。

そして、詩はどこからともなく白い紙をだしてそれを器用に指先で操って遊び始めた。

俺、アリス使ったんだ.....

自覚こそなかったが、アリスを使うということに、初めて実感が沸いた気がした。

他人といることによって意味のなす、俺のアリス。

自分のアリスについて何か気づくことができた瞬間だった。







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