憎めない奴(殿内side)
授業の中で一番きついのが、昼食後の授業ではないだろうか。
空腹も満たされ、睡魔と闘っている生徒たちは少なくはないだろう。
殿もその一人で、授業に出る気力もなくさぼっていた。
それにしても、この学園の敷地内は広すぎる。
今も迷ってしまったところだ。
ここはどこだろう......
そう思いながらも、手近な場所で昼寝でもしようかと歩き進めていた。
あの詩ってやつにはペースを乱される。
今日も、能力別クラスに連れて行くと言われたが、行く気なんてさらさらない。
このまま授業をサボったついでに、寮に戻るつもりだ。
そういえば.....あいつのアリスって、なんなんだ?
自分は増幅のアリスと言われたが、いまいちぴんとこない。
そりゃあ、学園に来るきっかけになった時のことは今でも覚えている。
だけどこんなアリス、他のアリスがなきゃ意味のないアリス。
普通に今までどおりには、十分生活していけるもの。
それなのになぜ、外界と隔絶されてまでこの学園にいなきゃいけないのか。
そもそも、何で最近の考え事といえば詩関係なのだろうか。
忘れよう、あんなやつのことなんか。
そう思い、ふと上を見上げてぎょっとした。
なぜならば、枝を豪快に広げた大きな木の上に、今忘れようと心に決めた張本人がいたからだ。
しかし、相手がこっちに気づいていないことにほっと胸を撫で下ろし、すぐに立ち去ろうとした時だった。
「こらぁー!そこの中等部生!授業サボって何やってるーーーー!!!!」
いきなりのことに飛び跳ね驚く。
しかしその反応を見せたのは自分だけではなかった。
―ドサッ
「う゛ぐっ....っつーーーー」
落ちてくる体をよけると、痛そうな音がそばで聞こえた。
「え、殿内!?」
詩はあからさまに驚いた。
俺はどんな顔をしたらいいかわからず、戸惑う。
とりあえず、
「あの教師に見つかったけど」
と報告。
詩はそちらを見て青ざめる。
「ばか!逃げるぞ!」
と言って、すぐに立ち上がり駆け出した。
俺も、こちらに向かってくる教師をみて、捕まるまいと、詩なら逃げ道を熟知しているだろうと判断しついていった。
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