憎めない奴(殿内side)
詩に言われたことは無視して、あの日は勝手に寮に帰った。
案の定、次の日の詩はうざかった。
「なんで帰るんだよー!
次は何が何でも連れてくからなっ」
そんな言葉も聞き流した。
でも、そうやって構ってくるおかげで、詩のことを気になり始めていた。
授業中、あいつはいつも寝ているか窓の外をぼーっと眺めているかで、授業に参加している様子はまったくといっていいほどなかった。
そのことに関しては自分も人のことは言えないのだけど。
たまにその姿が教室にない時もあったが、
「好きなことは悪戯とサボリと寝ること!」
という言葉を思い出し納得する。
でも、2,3日見かけない日はさすがにどうかしたのだろうと思った。
だってその日は、詩が能力別クラスに連れて行くと言っていた日だったから。
でも、ひょっこり顔を出していつものようにクラスメイトの中で笑ってるあいつをみて、
気分屋な奴、と思い、やっぱり気に食わなかった。
でも、あいつはちゃんと俺のところにきて、
「昨日はごめんな。
でも、次は絶対連れてくから!」
と、本当に申し訳なさそうに言って、その後ふと、悲しそうな顔をした。
すぐにその表情は消えたけれど。
―今思うと、たぶん任務だったんだと思う。
詩の任務について知ったのはもっと後のことだった。
表情をころころ変える詩は、本当に不思議な奴だ。
素っ気無く接していた俺に、なぜか根気よく話しかけにきた。
少しずつ話すようにはなったけど、俺が心を開くことはなく、適当に返すだけ。
なぜあんなに話しかけにきたのかは今でも謎だ。
そんな詩との出会いもありつつ、学園生活は一週間を過ぎていった。
本当にあっとゆうまだった。
自分も、いつかはここの風に流されて、軟禁生活に慣れてしまう日が来てしまうのだろうか。
なんだかそれが、気に食わなかった。
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