家族/唯一のつながり
「こらぁー詩ぁ!!!!」
今日もまた、祖父の怒声が神社中に響いた。
詩はべっと舌を出すと、神社中を祖父から逃げ回る。
詩、5歳。
母親のもとを離れて2年になるが、一向に帰れるめどはたっていなかった。
それでも、祖父との仲は一緒に過ごした分だけよくなっていた。
この頃の詩は、毎日のように祖父を困らせる悪戯をし、そのたびに怒られていた。
詩はそれでも懲りずに、毎日毎日祖父を困らせていた。
祖父の掃いた落ち葉を蹴散らし、
供えてあるもの勝手に食べ、
神社にある木に登り、
石碑に座ってくつろいでいた。
毎日、祖父を怒らせる悪戯を考えるのが楽しかった。
「このくそがきーっ
何回言ったらわかるんじゃあ
神様の前でそんなことしたらばちがあたると言ってるじゃろう!!」
ばしっとホウキの柄で頭を叩かれる。
「はーい
ごめんなさーい」
そう言って詩はその場を走り去る。
「こらぁ!
きいとんのかぁー!?」
後ろから、祖父の声が聞こえ、ホウキをぶんぶん振り回している姿を想像してぷっと吹き出した。
一方祖父は、ふぅ、と溜息を漏らし、
「まったく、手のかかる子じゃ」
と呟くが、その顔は楽しそうだった。
本当に、詩が来てから毎日が楽しいのう.....
祖父は、走り回る詩を優しい眼差しで見つめるのだった。
でも、そんな日常は、長くは続かなかった……
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