家族/唯一のつながり
「何してるの、詩!?」
母親の甲高い声が響いた。
詩のいた部屋のあちこちに、見たことも無い白い紙が散らばっていた。
よく見るとそれは、人のような形をしていて、母親にはとても不気味に見えた。
しかしそんな母親の感情を読み取れない幼い詩は、あどけなく笑い、白い紙をふりまわしてみせる。
当時、3歳だった。
母親の顔は歪み、すぐさまその部屋を出て行った。
そして、電話の受話器を握っていた。
「もしもし、今すぐ子どもを預かって!
気味悪くて仕方ないわ!」
母親は受話器をおくと、1人ふうっと溜息をついた。
そして、髪を掻き揚げその場にへたりこんだ。
「どうして.....どうしてこうなるのよ......」
母親は力なく呟いた。
それからの、母親の詩に対する態度はあからさまだった。
「こっちを見ないで!」
「気持ち悪い!」
「何で?!なんで普通の子に生まれてきてくれなかったの?」
「アリスって何なのよ!」
毎日のように、そんな声が家に響いた。
父親は、何も言わなかった。
ただ、詩に目を向けることなく、母親の肩を抱いていた。
2人とも、詩を抱くことはなかった。
それからしばらくして、詩は母方の父、祖父のもとへ引き取られた。
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