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式神のアリス/弱さと幼さ/未熟な式神



あれから、あいつの姿はよく本部で見かけた。

見かける時はいつも傷だらけで、罰則をくらったと一目みてわかった。

先生がいうに、あいつのアリスは結界さえなければ十分自分で抑えられると言っていた。

だから、意図的に人を傷つけている、と。

その真意はわからない。

でも、一旦出したアリスをとめるのは先生でもてこずっているらしく、そこまで深くはないが、たまに傷だらけで特力の教室に来ることがあった。

先生は、「誰かがあいつのアリスと、あいつ自身と向き合ってやらないといけないんだ」と言っていた。

そして、今日も詩が問題を起こしていると報告が入った。

柚香先輩と、先生と他愛の無い会話をしている時に。

先生はすぐに走った。

その時、

「先生、私も行く!」

と、柚香先輩が急に言い出した。

しょうがなく、俺はついていった。







そこは、この前の教室のような光景だった。

聞くところによると、年上の初Bの子たちが詩の噂を聞きつけ、詩に悪戯したことが原因とのことだった。

廊下の真ん中に詩はたたずみ、肩で息をしていた。

そのまわりには傷を負って、泣いている子達がいた。

その少し離れたところに、初等部のギャラリーたちがいて、一連の様子をみていたらしくひどく怯えていた。

先生たちが慌てて誘導するが、詩には近づけない様子。

そんな中、先生は1人動いた。

が、その前に小さな影が1つ動いた。

そいつは詩と同じくらいの背で、めがねをかけていて、そのめがねの奥の瞳が涙でぬれていた。

でも、拳をぎゅっと握り、何か決心したようだった。

「おまえ、なんでこんなことするんだよっ」

震える声で、でも瞳はしっかりと詩を見据えていた。

詩は顔をあげる。

その瞳は、ひどく荒んでいて、それでいて悲しげだった。

「こいつらがわるいんだろ....」

小さく、詩は言った。

「こんなわけわかんない力、いらない....

だからはやくつかって、なくすんだ....」

先生をふくめた俺たちは、はっとする。

詩の真意が見えた気がした。

めがねの子は静かにその場にいる初Bの子のかたわらに行き、傷口の部分に手を当てた。

淡い光が少し発し、傷口は跡形も無くなった。

それを、他の子にも施した。





.....治癒能力か。





めがねの子は立ち上がる。

そして、詩の目の前に立った。

興奮状態の詩にこんなに至近距離で近づくのは危険だ。

すぐさま詩のまわりから式神が現れる。

「昴、逃げろ!」

先生が叫び、他の先生たちも顔を歪める。

しかし、式神はすっと消えた。

みんなが目を見張る中、詩は「う゛っ…」と声をあげながら、その場にうずくまった。

そして、皆おかしいことに気づく。

何が起きたのか、詩の痛がりようが尋常じゃなかった。

「くっ.....

おまえ、なにをした....」

詩は痛みをこらえ、昴と呼ばれた子を睨む。

昴の瞳は、怒っているように見えた。










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