式神のアリス/弱さと幼さ/未熟な式神
「ただでさえ、入学する前にゴタゴタがあって精神的に不安定だったのに、
学園側につけられた制御装置のおかげでアリスが暴走し、転入初日からクラスメイトに恐れられて、あいつは孤立してたんだ.......
だからせめてもと、ここに連れて来たんだけど、まるでこちらを信用してなくて、
今回は意図的にアリスを出して、今の状況だ」
「結界でアリスを抑えられないなんて、初めて聞いたけど....」
「ああ、それは今も学園側で調べている。
結界は、もとは障害となるものを排除する能力。
その結界が、詩には式神のアリスに働くのではなく、アリスを使う時に邪魔になるもの排除するときに働いてしまう。
詩のアリスは、普通のアリスより、大きく精神面に関わるとわかっている。
そのため、結界を張ると詩は外界から心を遮断され、余計な念にとらわれず、本能でアリスがはたらいてしまう」
「....少し、難しかったか?」
話し終えて、先生は苦笑いした。
でも、その瞳はまた、誰かを救おうと決めた時の目だった。
そう、あの頃、僕にも向けられていた目。
「じゃあ、あのこのアリスを抑えるすべはないの?」
今まで口をつぐんでいた柚香先輩が、口を開いた。
「あの子の居場所はどんどん無くなってしまう.....」
「....それに関しては大丈夫だ」
先生の言葉に柚香先輩はぱっと顔をあげる。
「俺のアリスでなんとかなる。
今、制御装置を開発中だ。
まあ、それまで少し時間はかかるって言われたけど」
「そう、よかった。
....先生、またあの子連れてきてくれる?」
「え?」
「この学園で居場所がないなんて、そんなの悲しすぎる。
ここにいるみんなは、家族でしょ?」
柚香先輩はいつもの笑顔を向けていた。
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