式神のアリス/弱さと幼さ/未熟な式神
幸い、ケガ人はいなかった。
でも、皆恐怖が消えていないようだった。
一体、この教室で何があったのか。
それは先生が、ぐちゃぐちゃになった教室を皆で元に戻してる最中、話してくれた。
「東雲 詩、初等部A組5歳。
〝式神のアリス〟」
「式神のアリス?」
「ああ。
これがそれだ」
先生は、少しぐちゃっとなった白い紙を差し出してきた。
よく見ると、それは人のような形をしていて、その素材も和紙のようなものだった。
「これが?」
「ああ。
詩はこの式神とよばれるものを出して、操ることができる。
さっきも、これを大量に出して教室内を暴走させた」
「だから、教室内がこんなぐちゃぐちゃに.....
でも何でそんなこと」
「詩のあのアリスは、強すぎて今のあいつの体には不釣合いだ。
まだコントロールがちゃんとできず、式神をうまく収めることができない。
それよりも、精神的な面の方が大きいと思うけど」
「でもそんなの制御装置でなんとかなるじゃん」
「.....それが問題なんだよ」
先生はまた、深い溜息をついて話し始めた。
「あいつの.....詩の式神のアリスは、結界のアリスと相性が良すぎたんだ」
「どういうこと?」
俺は意味がわからず首をかしげた。
「初等部にきた初日に、あいつのアリスが暴走したんだ」
先生はやるせないという表情で言った。
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