旅立ち/目覚めたとき
蜜柑の見送りに行く前のこと。
詩は、病室で目を覚ました。
そこにいたのは、##NAME1##だった。
何日も寝不足が続いていたのか、少し痩せて疲れているようにみえた。
でも、詩が目を覚ましたのをみて、その顔はすぐに血色が戻った。
「詩!」
##NAME1##はそう叫んで詩に抱きついた。
まだまだ頭が追い付かなかったけど、そのぬくもりを感じて、ゆっくりと##NAME1##を抱きしめた。
「よかった...よかった...」
涙を溜める##NAME1##。
「心配かけて...ごめんな」
どれだけ心配かけただろう。
詩は、そういうことしかできなかった。
「いいの...詩がいてくれるだけで、もういいよ」
##NAME1##また、そう言った。
それから、祖父のアリスで自分が蘇生されたことをきいた。
祖父のことを思い、自然と涙が出た。
じじー、覚えてなくてもいいよ。
俺は、じじーからとても大事なものをもらえた。
胸がじんと熱くなり、涙がとまることを知らなかった。
##NAME1##はそれを、ただじっと見守っていた。
また、夢かと思っていた昴も、現実だったと思いなおす。
今井兄妹の無茶と必死な思いに、また苦しくなる。
未だ学園に姿を見せない棗....
あれからどうなったのか心配でたまらない。
それはもちろん蜜柑も同じで、その蜜柑が棗の行方を知る前に、学園を出なければならない事実、しかも学園の記憶すべて失うということに衝撃を受けた。
いてもたってもいられなくなり、医者の反対を押し切って、半ば強引に見送りに出たのだった。
ペルソナが学園を去ったこと。
初校長と月の末路。
##NAME1##は順を追って説明してくれた。
そして、詩のアリスがこの学園にないことも知る。
自分のアリスが他の誰かに渡り、それが何か自分の意図しないようなことに使われたらと思うと、いたたまれない。
それに関しては、志貴や高校長からも正式に説明があった。
現在、売られたり取引されたりしたルートは調べているが、その捜索は難航しているという。
本当に、自分のアリスは思っていた以上に希少であると思い知らされる。
それがまた、詩を新たな決意へと導いた。
「俺は、自分のアリスを、自分で取り戻してみせる。
もうこのアリスが、憎しみをうむ戦いに利用されないためにも。
このアリスをつなげてきた人たちの希望の光も、陰らせたくないから_____」
蜜柑も新しい旅に出るのなら、応援しよう。
俺も、今度は自分の人生を切り拓くために新しい旅に出る。
このアリスを誇りに思うから。
式神のアリスをもって生まれたこと、このアリスの尊さ、命の美しさを知ったからこそ、今度こそちゃんと自分の道を歩んでいく。
大丈夫、今はたくさんの仲間がいるから。
先生が教えてくれたこと。
みんながくれた温かい感情。
両手いっぱいに抱えて、これからも胸張って力強く、生きていくよ__________
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