旅立ち/目覚めたとき
ー蜜柑の、学園退出の日
その日は、多くの生徒が学園の門につめかけ、蜜柑に感謝の言葉を送っていた。
蜜柑もそれに応える。
「みんな...ありがとう。
この学園に来て、今まで楽しいこと、つらいこと......
いろんな試練もあったけど、ここまで....学園のみんなと一緒に歩いてこられたこと、
今はとてもウチの誇りです。
とても幸せな一年半の学園生活でした。
今までありがとう.....っ
みんな、お世話になりました....っ
この学園も、みんなも、
ずっとずっと
大好き....っ
ウチが今日流す涙を、不安や悲しみ一色にさせないでくれて、
本当にありがとう....っ」
蜜柑は泣きながらも、しっかりと前を向いていた。
「蜜柑....っ」
そんな中、みんなの間をかきわけてきたその存在に、蜜柑は驚く。
蜜柑だけじゃなく、みんな驚いていた。
「詩先輩...っ」
その姿にまた、蜜柑の目から涙があふれる。
詩は、##NAME1##や殿に支えられながらも、懸命にこちらに向かって歩いてきた。
「蜜柑!」
「詩先輩....!
けがは....っ」
「そんなの、もう大丈夫だよ!
それよりも、蜜柑が学園出るってきいて、
寝てられるかよ。
俺だって、蜜柑に言わなきゃいけないことたくさんあるのに...っ」
「よかった...
詩先輩が目さめて、よかった」
「ああ。
寝てる間のことは##NAME1##からさっき、全部きいたよ。
蜜柑の記憶がなくなって、学園を出ることも、
棗のことも、
今井兄妹のことも.....っ」
詩の悔しそうな顔に、また蜜柑も胸が痛くなる。
「....でも一番は、
蜜柑につらい選択を強いるところだったこと、
謝りたい。
命を選ばせるようなこと、そんなことできるわけないのに、つらい選択を、蜜柑にさせるところだった。
申し訳ない....っ
棗のことも、守れなかった。
俺がそばにいながら、あいつの命が燃え尽きそうだったのに、俺は、とめれなかった....っ
蜜柑、ごめん。
先生の子ども、先生の代わりに守りたかった....」
詩は、蜜柑の前にひざまずき、こうべを垂れていた。
後悔に震える肩。
見たことのない学園の人気者の姿に、みんな注目していた。
しかし、蜜柑はその頭をぎゅっと抱きしめた。
「もう、ええよ...。
詩先輩、もうええ。
お父さんの代わりにならなくてええ。
詩先輩は詩先輩として生きて。
お父さんの死が無駄じゃなかったのは、ここにいるみんなが、一緒に戦ってくれて証明された。
あの時、見てることしかできなかったのはたぶん、すごく悔しかったと思う。
でも、もうその呪縛から抜け出してええ。
お父さんも、こんなに苦しむ詩先輩をみたくないと思う。
すべてを背負いこまんといて。
ウチかて、詩先輩にはたくさん助けてもらった。
詩先輩も、詩先輩のアリスも、大好きやよ」
そう笑った蜜柑の後ろで笑う、先生が見えた気がした。
「-詩、自分の人生を歩め!
俺が見守っててやる!」
そう、言われてる気がした。
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